タワーリング・インフェルノ

タワーリング・インフェルノ [DVD]

タワーリング・インフェルノ [DVD]

世に大作と呼ばれる映画を、多く見逃している。特に、パニックものは避けて通ってきたので、「ポセイドンアドベンチャー」も「エアポートなんとか」も見ていない。本作もまたしかり。
「見たことがない」と言ったところ、正月早々家人が借りてきてくれた。今更とか言うなかれ。と主張したいが、なんと日本公開1975年の作品である。30年たっているということで……ネタバレでもご容赦願う。まだ見ていない人は読まないのも構わぬが、できるならば今すぐ見たほうがいい。こりゃすごいわ。いきなり評価の★★★★☆。

ストーリーがすごい

サンフランシスコに完成した138階建ての超高層ビル「グラス・タワー」。その名の通り、全面窓ガラスできらきらと輝いている。設計者のダグは、この仕事を最後に砂漠で隠遁生活を送るつもりだが、竣工パーティに出席するために戻ってきていた。すると、ビル内で使用されている電線の仕様が自分の指示とは違い、質の低いものに変わっていることに気付く。このままでは、ショートによる火災が起こりかねない……とビルオーナーと配電工事の責任者であるその娘婿に警告するも、彼らは「大袈裟すぎる」と言って取り合わない。当夜の竣工パーティには政治家や有名人もたくさん招待しているのに、今更中止なんて不可能なのだ。
ビル全体を管理する防災センターもまた、混乱していた。保安責任者は「火災を知らせる機能が働いていないのでは?」と心配するが、同僚は「警告がないのは火災がない証拠」と笑って済ませる。
しかし、誰も知らぬうちに、81階の倉庫でヒューズから火花が飛び、小火が起こっていた。それは誰にも気付かれぬまま徐々に大きな炎へとなっていくのだった。
パーティはその50階以上も上の最上階で始まる。出席者はオーナー、その娘夫婦、市長夫妻、上院議員、ダグの恋人、未亡人と彼女を騙すつもりの老詐欺師、そしてその他大勢の着飾った男女が集っていた。この先何が起こるか知る由もなく。
延焼はしないと言われていたビルが、炎に包まれてそびえたつ地獄(towering inferno)となるのにあとわずか……。
パニック映画であると共に、見事な群像劇にも仕上がっている。親子の情愛、恋人への思い、そして夫婦の絆、もろさ。この人には生き残ってほしい、という観客の思いは炎の中に消え去る。抗えぬ力の前に、容赦なく燃え尽きる数々の命。
絶望的状況で冷静でいられるだろうか?他人に優しくできるだろうか?猫を助けられるだろうか?別れの言葉を誰に送りたいと思うだろうか?

出演者がすごい

最初から出ずっ張りで走り回るダグに、ポール・ニューマン。途中から現れるものの、行動範囲は出演者一の消防隊長オハラハンにスティーヴ・マックィーン
マックィーン素敵。マック様とお呼びしてもよござんすか?歩き回り走り回り飛び回り、吊り下がり飛び降り煤だらけ。汚れ疲れるほどに美しい……ハアハア(不純な見方だなあ)。
その他に、ビルオーナーにウィリアム・ホールデン(「喝采」「ワイルドバンチ」)、その娘婿にリチャード・チェンバレン(「将軍」)、上院議員ロバート・ヴォーン(「ナポレオン・ソロ」「刑事コロンボ」)、ダグの恋人にフェイ・ダナウェイ(「俺たちに明日はない」)、貸衣装のタキシードに身を包んだ詐欺師にフレッド・アステア!!!(ちょびっとダンスシーンもあり)、更に保安主任役にかのO.J.シンプソン(殺人容疑)……豪華豪華。
特に、チェンバレンは卑怯でダメで嫌な奴全開。観客に「お前は死んでいい」ときっちり思わせてくれる。イヤだったろうなあ、この役。

規模がすごい

最初に原作として二つの小説のタイトルが出た。ふうん、と思い調べたところ、面白いことが分かった。
原作の一つは「The Glass Inferno」。もう一つは「The Tower」。前者は20世紀FOX、後者はワーナーが映画化権を持っていた。しかし、互いに似たような高層ビル火災の映画を作るより、共同出資でより大規模な映画を製作しようという事になった。こうして総製作費1400万ドル、ハリウッド史上初の大手二社共同製作の映画が誕生したのだ。もしかしたら、主演の二人はそれぞれの映画に出るはずだったのかな?などと想像を膨らませてみたりもする。

ところで

私はスティーブ・マックイーンが出て来た時、「かっこいいい〜!」と叫んだ後に、「誰?」とつぶやいて家人をコケさせました。「大脱走」も「荒野の七人」も見たんだけどなあ。すっかりお顔を忘れておりました。