スクランブル

スクランブル (集英社文庫)

スクランブル (集英社文庫)

今日、私は友人の結婚式に参列した。
中学一年の一日目、彼女は私の前に座っていた。それが、私たちの出会いだった。
今日は、白いドレスに身を包み、ご両親への手紙を読みながら声を詰まらせていた。
鬼の目にも涙、と言おうかと思ったけれどやめた。茶化している人間が涙ぐんでたんじゃ、さまにならない。


私は中学・高校を、神奈川にある女子高で過ごした。
その時得た友は、数こそ多くはないけれど、私にとってかけがえのない大切な人たちだ。
今では名前も思い出せないようなクラスメートにも、様々な影響を与えられた。
共に学び、遊び、喧嘩し、反抗し、制服のスカート丈や髪ゴムやカバンの持ち方、沢山の些細なことにこだわりを共有していた200人の少女たち。臙脂の襟のセーラー服、重たいスカート、黒タイツ。懐かしく、忌まわしく、戻りたいような、思い出すのが怖いようなあの6年間。
当時は不真面目なつもりだったが、今振り返るとなんと生真面目なおカタイ女子生徒だったことだろうか。信仰に迷い、友情に悩み、強い自意識に振り回され、容貌や成績の劣等感にさいなまれながら、優雅に生きているように見えた級友たちに憧れていた。もしあの頃の自分に会えるなら、肩を叩いて「もっと気楽に」と言いたい。どうせこんな人間になるのだから、と付け加えて。


本書を語るのに思い出話をしたのは、状況がちょうど良く似ているからだ。
1980年の秋、中高一貫の女子高に通う6人の少女が、校内で発生したある殺人事件に遭遇する。物語は6つの章に分かれ、それぞれを6人が回想して語る……15年後、その内一人の結婚式の席で。
失われて二度とは戻らない日々。思い描いていたのとは違う未来。
残酷で、自己中心的で、「普通」の少女たちを蔑みつつも怖れ、自分たちだけは特別だと思っていた彼女たちが、15年後のその日に発見する真実とは?「犯人は金屏風の前に座っていた。」


事件の犯人は誰なのか?も重要なのだが、それ以上に少女たちの学生時代の描写に私はのめりこんだ。
若干カリカチュアライズし過ぎている部分もあるが、彼女たちはかつての私たちだ。
また、1963年生まれの若竹七海にとっては、彼女自身の青春に捧げる物語でもあるだろう。
今はもう「オトナ」になってしまった全ての少女たちに。オススメです。★★★★☆