ナショナル・トレジャー


家人の招待で観覧。久々のアクション超大作である。
ジェリー・ブラッカイマー節炸裂の、お約束をしっかり踏んで満足させてくれるタイプの映画であった。突っ込みどころ満載なのも、想定の範囲内である。


ベンジャミン・フランクリンゲイツニコラス・ケイジ)は、先祖代々伝えられた「フリーメイソンの財宝」を捜し求めるトレジャーハンター。南北戦争中に、建国の父祖達がイギリス軍から隠したまま歴史の闇に消えたとされる、「一国の王ですら独占するのを憚られる」ほどの財宝である。
しかし、宝が見付からぬまま時は過ぎた。ベンの父パトリック・ヘンリー・ゲイツジョン・ボイト)は伝説に踊らされ時間を無駄にしたと後悔しており、息子には「あれはイギリス軍を宝探しに熱中させるためのウソだったんだ」と言い聞かせている。歴史学会でも、トンデモ情報を信じる胡散臭い一族として、ゲイツ一家の名前には注意信号が点灯している。
一族に伝えられた情報はただ、「秘密はシャーロットと共に眠る」という謎めいた一文のみ。しかし、長年の研究の結果、ビルは「シャーロット」が人名ではなく船名であることを突き止め、コンピュータマニアの相棒ライリー(ジャスティン・バーサ)、スポンサーのイアン・ハウ(ショーン・ビーン)と彼の仲間と共に北極へと赴く。「シャーロット号」は海流に流され、今や氷の中に閉じ込められていたのだ。「君の支援なしにはここまで辿り着けなかった」「いやいや、君ならいつかは自力でやり遂げたさ」、とベンとイアンは友情を確認しあう。
船内からは火薬の樽ばかりが見付かり、捜索隊は半ば諦めかける。しかし、その樽の一つから海泡石のパイプが発見される。「これだけ?」と思いきや、そこには次の暗号が隠されていた。それは財宝の地図のありかを教えるものだった。そして、ベンの解読によれば、地図が書かれているのは……なんと、アメリカ独立宣言(宣誓書)の裏ではないか。「国宝級の文書だ。手に取って調べるなんてできない……」と失意に沈むベン。しかし、「ころしてでもうばいとる」(とは言いませんが)勢いのイアンは彼に対立、「俺は実は実業家以前には犯罪者だったのさ」、「国立公文書館から独立宣言を盗み出す」と宣言。「そんなことはさせない!」と言うベンに、「じゃあお前は邪魔者だ」と銃を向ける(さっきまでの友情はどこに……)。格闘する内に火薬が引火、船は木っ端微塵、パイプはイアンの手の中に。
命からがら逃れたベンとライリーは、FBIに「独立宣言が狙われている」と伝えるが相手にされない。公文書館の責任者、アビゲイルチェイス博士(ダイアン・クルーガー)にも「で、そのパイプは?ない?ビッグフットにでも奪われたの?」と鼻で笑われ、あしらわれる。
すると、犯罪を憎んでいたはずのベンは一転、「誰も信じないなら俺が盗んでやる!そうでなければイアンの魔手から独立宣言は守れない!」という激しい方向転換を行う。奇策を繰り出し、厳しい条件下から独立宣言を盗み出すベンとライリー。しかし、その際イアンに見付かった上に、なりゆきでチェイス博士と道行きを共にすることとなる。

ベンを追うイアンとFBI捜査官セダスキー(ハーヴェイ・カイテル)。
逃げ切れるか?暗号は解読されるのか?そして、財宝は真に存在するのか?一族の誇りを取り戻すべく、そして歴史的探究心を満たすため、三人は南北戦争当時の史跡巡りの逃避行へ……。


「宝探し」もののオチは、三つに大別できると思う。
A:金銭的価値のある財宝が見付かる
B:かつては価値があったが、今は価値のないものが見付かる
C:精神的価値のあるものが見付かる
拝金主義を避けるためか、B・Cのオチが多いように思うのだが、さてこの映画ではどうなんでしょう。それは見てのお楽しみ。
全体の規模は大きいが、レベルとしては「名探偵コナン」と変わりはない。暗号は強引で、偶然やご都合主義がストーリーを支配している。しかし、コナン同様それなりには楽しめる。コナンより深み少な目で楽ちんなくらいである。これぞ娯楽大作。
特に、逃避行で神経すり減らしているはずの三人組が、実に暢気な所がいい。ベン(財宝オタク)とチェイス博士(歴史オタク)に知識で叶わぬライリーが唯一優位に立つシーンは、この作品の白眉である。(いいのか、アクション映画なのに。)その他のシーンでも、ライリー役のジャスティン・バーサはいい味を出していた。「ミニミニ大作戦」のセス・グリーンが演じていたキャラクタそっくりではあるが。

ジョン・ボイトは「トゥーム・レイダー」(実娘アンジェリーナ・ジョリー扮するララ・クロフトの父)に続き、「トレジャーハンターの父」役。どうせなら、トレジャーハンターの設定には必ず彼を抱き合わせ出演させるくらいの定番になってほしいものである。
建国の父祖とフリーメイソンの関係については、小説「8(エイト)」(キャサリン・ネヴィル)で読んで知っていたが、改めて見るとやはり興味深い。映画の最後にも、現代に生きるフリーメイソンが描かれる。
ベッドシーンもないし、残酷描写もほとんどない。アメリカ史のお勉強にもなる。(トンデモをトンデモと、フィクションを演出と承知の上ならば!)家族で楽しむにはいいかもしれない。★★★☆☆


気のせいか、ニコラス・ケイジ髪が増えているような気がするが、それはさておき。
気になる点は毛だけではない。最後にネタバレ連続。
・「シャーロットと共に眠る」という暗号が示す物が「宝の部屋への鍵のありか」だとすると、暗号製作者はその時点で既に船が沈没(または漂流)していることを知っていたことになる。その上であんな火薬満載の船に放置か!沈没船があんな情報だけで見付かるなんて、期待する方が間違っとる。一度引き上げて、別の所に隠そうよ。(隠すに任せよ、ということなのかもしれないが。)
・ベンが自分で盗むぜ!とするのは、百歩譲ってよしとしよう。しかし、盗んですぐ返すの?そのまま宝探しするんでしょ?命がけで「正義の反対」したのはなんだったのさ。どうせなら、そこからでもいいからイアンと合流しなさいよ。そうしたら、FBIに追われるだけで済むでしょうが。
・独立宣言の裏にある「あぶり出し」の暗号だが、あれはあんな風に「息をハアハア」しただけで浮かび上がるもんか?暑い日には全部表示されそうだ。
トリニティ教会の地下にある螺旋階段の縦穴は、地下鉄の通過であれだけ揺さぶられながら数百年持ち堪えたのか。すげーなすごいです。てゆーかあそこまで大規模な土木工事及び搬入作業しておいて、秘密が守られてるってのもすげーなすごいです。燃料が今なおバッチリ使用可能なのもスバラシイです。


あと、今回はつくづく「(名前は覚えられても)顔を覚えられない」という自分の弱点を思い知った。ショーン・ビーンを見て「いい男だあ」と思うも、それが「the Lord of the Rings」のボロミアだと気付かない。

「このFBI捜査官の目付きスゴイな」とか思うだけで、それがハーヴェイ・カイテルだと分からない。「ピアノ・レッスン」も「天使にラブ・ソングを…」も見たでしょうが(そんだけかい)。

がんばれ、私の脳細胞。