11月某日 「FR」

 先日チャイルドシートを購入し、家人の車の後部座席(運転席の後ろ)に設置してもらった。商品には適合表が付いており、この車両も取り付け可能となっていたのは確認済みである。しかし、家人の車はクーペ(2枚ドア・4人乗り)。設置はできるが、(1)乗り込みづらい (2)狭い。そして、運転席を圧迫すること甚だしい。助手席側後部座席に設置すれば良さそうなものだが、そうすると赤ん坊を抱いて車道から出入りせねばならない。危険だ。
 我々は交通の便の良い所に居住しており、車が必需品ということはまったくない。だが、車は家人の趣味であり、本人の訴える所に拠れば「自分にとっての車は、あなたにとっての本」でもある。確かに本がなくても死なないが、失うわけにもいかぬものである。本はハイオク満タンにしなくていいし、重量税もないし、月極本棚料も取られないけどね。
 そんな訳で、「車を手放す」という選択肢は端から存在しない。必然、「今のままガマンして使う」、または「違う車に変える」ということになる。家人は「子供のために4枚ドアにしよう」と決心し、車探しを始めた。
 問題は、「違う車」の選択肢が恐ろしく少ないという点である。家人の座右の銘は「生涯FR(譲っても四駆)」。FRとは自動車の駆動方式の分類の一つで、Frontエンジン-Rearドライブの略。難しいことはさておき(よく分からん)、家人は「四足動物は前足で方向を決めて走る=だから車もそうやって動くのが正しい」と言う。うららもFRらしい。だが、この「正しい」駆動方式は現状ではマイナーなようで、市場に出回る車種のほとんどがFRではない。
 しかも、「TOYOTA車は嫌い」とか、「メルセデスは好きじゃない」(好きでも買えませんが)とか、「ワゴンはいやだ」とか、実にわがままである。この点を諭そうとすると、「でも、あなただってミステリを読みたいのに違う本にしろって言われたら嫌でしょ」と言う。私は出版社で選別はしてないつもりだが。
 そんな訳で、あれこれとディーラーを巡って逡巡中である。そりゃあ、金に糸目を付けなければいい車はあるが(運転手だって雇っちゃうよ)、そういう訳にはいかない。ああ、予算の壁。とりあえず年末ジャンボでも買うことにする。