バカ検定 または 父親であるということ

子育てパパ力検定
という言葉を見て、
子育てバカ検定
と読んでしまった。
育児にかまけていると、社会常識が欠如してバカになるよ。でも、そのバカ加減こそがこどもへの愛情に比例するのだ!ビバ、バカ!
とかそういう開き直りなのかと……。

子育てパパ力検定 (こそだてぱぱぢからけんてい)

  • 社会 -2007年12月10日



NPO法人の「ファザーリング・ジャパン(FJ)」が父親に子どもや家庭への視野を広げてもらいたいということから設定した検定。問題は出産から6歳ぐらいまでの子育てや、子育てと仕事の両立をめぐる制度などを「生活」、「遊び」、「社会」、「制度」といったジャンル別に50問が用意される。「1歳未満の離乳食に不適切とされている食材と、それに含まれる可能性のある菌の組み合わせは?」といった問題に4つの答えが用意されていて、その内の1つをマークシート式で選ぶ。解答時間は1時間。正解数により「スーパーパパ」「ナイスパパ」「チャレンジパパ」「ドキドキパパ」の認定が行われる。2008年3月に東京と大阪で行われる。子育てパパ力を試したい人は男女を問わず誰でも受験できる。
http://dic.yahoo.co.jp/newword?ref=1&index=2007000689

検定についてはこちら。
http://www.kentei-uketsuke.com/papaken.html
「ママの受験も大歓迎」、「年齢、性別、経験等の制限も特にございません」とあるが、「パパ力」なんだからそんなに門戸を広げる必要ないでしょう。頑張ってお父さんをやっている人のためだけに開催してあげればいいのにね。
「練習問題」もある。
http://www.kentei-uketsuke.com/practice_guide.asp?exercise_id=papa001
当然妥当な線も多いが、なんちゅーか、これが「父親に子どもや家庭への視野を広げ」させるような内容なのか?という設問もある。

設問6
日本の代表的な昔話に「ももたろう」があります。さて、ももたろうは、桃から生まれたから桃太郎と名づけられたという始まりが今は主流ですが、それとは別のお話も伝わっています。それは次のうち、どれでしょう?

  • 桃の葉にくるまれて捨てられていたから
  • 流れてきた桃を食べた晩に作った子どもだから
  • 桃の木の股から生まれたから
  • 桃をたくさん食べる子だったから

「正解:流れてきた桃を食べた晩に作った子どもだから」。
由来マニアとしては、当然知っているのだが、昔話の「ほんとうは」バージョンを知ってるからってどうだというのか。そんなのこどもに言うのか?こういう知識が育児に有用とは思えん。
また、この解説がまた不思議。

解説:昔話に登場する主役は、出生に不思議や秘密がある場合が多く見られます。桃太郎、かぐや姫一寸法師のお話がそれです。また、桃太郎は仲間を募って鬼を退治し、お姫様を救うという構成ですが、これは映画『スターウォーズ』と同じです。月に帰る『E..T』がかぐや姫伝説と符合することは有名なエピソードです。
原文ママ

「出生に不思議や秘密がある場合が多く見られます」と言うなら、それを「解説」すればいいのになあ。ちなみに、「桃を食べた晩に」ウンタラというのは、桃の回春作用を暗示しているらしいぞ。(桃は精力・生命力のメタファー/他の例:桃源郷)やっぱりこどもにゃ言えないよ。
「『スターウォーズ』と同じ」とか、「『E..T』がかぐや姫伝説と符合」(『E.T.』)とか、世界が狭すぎないか?「世界各地の昔話に共通する」とかじゃないの?それに、桃太郎に「お姫様を救う」エピソードってあったっけ???私の知っているバージョンは、鬼退治の後は親孝行で終いだな。女っ気皆無。(Wikipediaのあらすじにもお姫様はいない。)


どうも、この手の企画を見ると背中がサムくなる。私の立場でブツブツ言っても、単なる負け惜しみというか、ないものねだりにしか聞こえないだろうが、とにかく好きになれないのだ。
こういう「父親の育児参加」をわざわざ声高に主張する向きを見ると、「育児に参加する父親は偉い」と言われているような気分になるのである。バカにしてんのか。そんな風に、おだててそそのかして盛り上げないと、父親としてやって当然のことすらしないと思っているのか。または、母親ならやって当然、誰もわざわざ褒めないようなことを、父親が行うとベリースペシャルなプレシャスイベントになるというのか(段々訳分からなくなってきた)。日本の家庭像って、そんなに前近代的なままなの?
そんな現状を憂い、意識を高めるのに効果がある、ということで実施しているのか?しかし、こういった検定で、「そうかオレも育児参加しよう」と思う人っているのか?する人は何も決意せずともしているだろう。今までしていなかった人が、「よし、まずは『パパ力』育成のために勉強だ!」とか言い出したら、お前はアホかと突っ込まずにはいられないだろう。


父親の育児=特別、という考えが理解できないわけではない。
実際、夫婦共働きでも母親の有給休暇ばかりが消化される夫婦の話(こどもの都合に合わせるのは妻ばかり)を聞いている。保育園の送迎を見ても、8割が母親である。
現実を見れば、積極的に育児参加している父親は特別な存在=希少ということなのだろう。父親による育児休業取得の数の少なさを見るまでもなく、それが殊更話題になることからして、そういった行動が物珍しさの枠から脱していない現状を物語っている。数十年前と変わらず、「お父さんはお仕事」ということか。
父母が家庭において同じことを同じようにする必要はないと思う。しかし、存在感が希薄になるほど家庭生活を離れていては、何のために結婚し、こどもを儲けたのか分からない。「検定」なんてなくても、別に意識しなくても、フツーにお父さんでいられたらいいのになあ。父親になるって、難しいことなのね。