ねこのばば



ねこのばば しゃばけシリーズ 3

ねこのばば しゃばけシリーズ 3

しゃばけ」、「ぬしさまへ」に続く、大江戸妖怪病弱捕物帳の第三弾。本作も持ち味バクハツの短編集である。
お話の中でも時は流れる。寝込んでばかりの若旦那だったが、いつまでもそうではない。今回は何とお見合いはするわ、一人歩きはするわと非常にアクティブな変身を遂げている……かもしれない。


映画化も検討されているという本作だが、ここに来てやや息切れの感があるのだろうか。巻頭の「茶巾たまご」には若干のテンポの悪さを、続く「花かんざし」の人物描写には少し違和感を覚えた。
「茶巾」で不思議だったのは、(ここからネタバレ→人間の振りをしている貧 乏 神=金次に妖 怪たちの姿が見えている(若旦那が鳴家にお遣いを命じているのを見ている)←ここまで)のを誰も不思議に思わなかったこと。何故なんだろう?
しかし、その後の三作品は今までどおりの快作であった。癖の強い坊主と対決するシーンも楽しい、表題作でもある上質ミステリ「ねこのばば」。キングを想起させるホラー風味の「産土」には、手に汗握った。若旦那が放蕩に走ると宣言する「たまやたまや」では、静かに動く時の流れにしみじみとした思いを味わった。いずれかは伏せるが、タイトルのつけ方も絶妙。思わずにやりとした。
何時もながら大胆無敵な妖怪手代たちも活躍。最後まで読んで安心した。やっぱり面白いわ。★★★★☆