陽気なギャングが地球を回す

陽気なギャングが地球を回す (ノン・ノベル)

陽気なギャングが地球を回す (ノン・ノベル)



いやあ、面白い面白い。
著者があとがきで「現実味や社会性にこだわらず、90分程度の長さの映画のような小説を読みたくて書いた」と述べているが、まさにそういった小説である。さすが作者、分かってるねえ。


銀行強盗に最適な人数は四人である。(理由もちゃんと書いてある。)
一人は他人の嘘を見抜ける男。
一人は他人に嘘を言わずにいられない男。
一人は他人の懐を探らずにいられない青年。
そして、他人に頼ることのできない女。
割り算は銀行強盗の取り分を計算するためにあるこの世界で、彼らは最も効率的なやり方で大金を強奪する。今回も準備は十分、手抜かりなく成功…のはずだった。
しかし、そこで思わぬトラブルが発生して、物語はますます面白い方向へと突き進んでいく。
人生の悩みも、いじめも友情も、死せるピアニストも死にゆくカバも、全てが口元に笑みをもたらす要素となる。私もギャングの一員になりたいなあ、と思わずにいられない。特に、嘘つき響野さんに寄せる親近感ときたら、バラ持ってプロポーズしたいくらいである。
肩の凝らないミステリを楽しみたいのなら、最近ちょっと疲れているのなら、ロマンがどこにあるのか知りたいのなら、迷わず本書を手に取られるといい。あー、楽しかった!★★★★☆


ところで、本書の中に「非効率な犯罪」について少々触れる部分が出てくる。
私もかねがね「頭の悪い犯罪者」を嘆かわしく思っていたので、大いに共感するものがあった。(信じない人もいるが)私にも理性はあるので実践こそしないが、「こうすりゃいいのに」と時に犯罪指南をしたくなることもある。
という訳で、バカな犯罪に手を染めんとしているオロカモノ諸君にもこの本を(私が勝手に)捧げよう。これぐらい楽しい気持ちになったら、きっとスマートに悪いことできるよ。