仮面の男

昨日、大学時代の友人夫妻と久闊を叙し、非常にいい気分で帰宅した。
私はアルコール耐性が弱い。つまりは下戸である。以前は「飲むと寒くなって震える」という急性アルコール中毒の初期症状みたいになったり、「飲むと眠くなって所構わず寝る」という迷惑な飲み仲間になったりしていたが、最近新しい情況を呈するようになってきた。
目が冴えるのだ。
そんな訳で、11時過ぎに帰宅し、普段ならそのままコロンとベッドに倒れこむのだが、昨日はだらだらとTVなど見つつ起きていた。そうでなかったら、見る機会はなかっただろう……このとんでもない名作を。


仮面の男 [DVD]

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原作はアレクサンドル・デュマの「鉄仮面」。三銃士シリーズの一つだったかと記憶している。
レオナルド・ディカプリオ主演(二役)、ガブリエル・バーン(ダルタニアン)、ジェレミー・アイアンズ(アラミス)、ジョン・マルコヴィッチ(アトス)、ジェラール・ドパルデューポルトス)共演という豪華な俳優陣で話題になった作品だが、その内の誰にも興味がない私は、当然の如く見たことがなかった。
昨夜も、チャンネルを変えたら時間的には中盤を過ぎたところ(仮面舞踏会のシーン)だった。状況は想像でしかない(が、たぶん合っていると思う)。
王様はルイ14世。残酷な王のようだ。三銃士は既にオッサン銃士で、銃士隊には属していないらしい。ヒゲはぼうぼうだし、約一名ハゲてたりもする。ジョン、君のことだ。引退したのか、追い出されたのか、ともあれ彼等は王に反目している。ダルタニアンは銃士隊長の地位にいる。ルイにはフィリップという双子の弟がいるが、錠付きの鉄仮面を被せられ、塔に幽閉されている。(何でかは知らない。)三銃士はフィリップを解放し、仮面舞踏会でルイと取り替えようと画策する。……というお話。
私はそもそもデュマを読んだ事がないし、アニメ三銃士程度の知識しかないので、「鉄仮面」が本当にこういう話なのかは知らない。でも……たぶん違うんじゃないかなああ?
以降ネタバレ全開で言わせていただく。


物語は進み、王の取替は一度は成功する。仮面舞踏会でルイを奪取し、衣装を替えたフィリップが王座に座る。協力者である王母も、それに加担する。しかし、異変に気付いたダルタニアンが追っ手を放つ。三銃士は逃げおおせるものの、フィリップは捕らえられ、再度仮面を付けて塔に閉じ込められる。
三銃士は彼の救出のため、罠と知りつつ塔へと乗り込む。そこへ単騎登場したダルタニアンは、彼等を助けようとするが、王自ら率いる銃士隊に包囲されてしまう。「私を差し出し、あなた方は逃げろ」と言うフィリップだったが、ここでダルタニアンが爆弾発言。「王を捨てられても、息子は捨てられません。」
そう、ルイとフィリップは王母とダルタニアンの子供だったのだ。(なんじゃそりゃっ。)
ともあれ、四銃士+フィリップはマスケット銃を構えた銃士隊の前に身をさらし、刀をかざして向かって行く。それを見た副隊長が感動しつつ呟く。「何という勇気だ……」。(何というのんきだ。)
五人の気迫に押されて引き金を引けぬ銃士隊に、王は射撃を命じ、彼等は震える手で引き金を引く。バチバチ撃たれる五人。硝煙が立ちこめ、その姿は見えない……と思いきや、薄れ行く煙の中から、よろめきつつ五人が現れる。(生きてんのかい!すげー。)その姿を見て、銃士隊は王の命令を無視して武器を下ろす。(撃つ前にやってやれよ。)
ルイは自ら剣を取り、仮面のフィリップに襲い掛かる。しかし、ダルタニアンが身を挺して彼を庇い、背中をぷすっと刺されて倒れる。激怒したフィリップがルイに反撃すると、虫の息でダルタニアンが言う。「よせ、彼はあなたの兄だぞ。」それに驚く銃士隊。(気付くの遅!)仮面を取ったフィリップは、確かに王と同じ顔である。(前回捕まえた時にも見てたでしょうが!)衝撃の事実に驚く副隊長は人払いをし……ルイとフィリップは入れ替えられ、仮面の男(ルイ)は塔に幽閉される。「人に与えた苦しみが理解できるように」という王(フィリップ)の命令によって。
場面変わってダルタニアンの墓。(銃で撃たれても元気だったのに、刺し傷は致命傷だったのか。)王母と共に佇むフィリップ。白い墓石に刻まれているのは、何故か鉄仮面マーク。(なんでだ。)


いやあ、これほどツッコミが楽しい映画は久し振りに見たよ。
最初にルイとフィリップを並べて見たら、すぐに「双子?」って思うだろとか。城の中で王母とタメ口きいてていいのかダルタニアン、とか。舞踏会の途中に乱入したお姉さんはその後どうしたんだ?とか。「息子は捨てられない」と言うダルタニアンだが、じゃあ塔に幽閉されているのは良かったんかい、とか。
また、見てる時から「この字幕は絶対に戸田奈津子だな」と思っていたが、やはり御大であった。”All for one, one for all.” を訳して曰く、「結束は」「固い」……翻訳の苦労は忍ばれるが、こりゃちょっと。
唯一「いいねえ」と思ったのは、戦闘中にジェラール・ドパルデュー演じるポルトスが、「あーいあーむポールトース!」と叫ぶところ。音楽が「スタン・ハンセンのテーマ」じゃなかったのが残念だ。


ああ、一つ誤字の訂正を。「名作」じゃなくて「迷作」でした。楽しかったけどね。(途中から見たので★は付けず。)