ゆめつげ

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ゆめつげ
畠中 恵
角川書店 2004-10

ねこのばば おまけのこ うそうそ ぬしさまへ しゃばけ

by G-Tools , 2006/10/10



しゃばけ」シリーズでお馴染みの作者による、サイキック時代劇
和菓子と気配りに満ちた若旦那の物語より、少しだけほろ苦い味付けである。


上野の端にある清鏡神社には、父と二人の兄弟という神官一家が暮らしている。
兄の川辺弓月(22)はのんびりや。弟の信行(18)はしっかり者。兄弟の順序が逆ならば、この貧しく小さな神社も安泰だろうにと言われぬこともないが、兄には余人にはあり得ぬ特殊な能力があった。
それが「ゆめつげ」である。「夢告(むこく)」とも言われるこの力は、祝詞を唱えつつ鏡を見つめると、その内に真実を告げる白昼夢を見せるという。
しかし、弓月の能力にはムラがあり、百発百中どころか五里霧の様相を呈することしばしばである。そのため、身内はもちろん氏子ですら彼の占いを当てにはしていない。
そんな折、平安時代から続く大社の神官が、弓月の能力を求めてやってくる。彼の神社で、さる大店の失踪した跡継ぎを「探す」占いを行ってほしいと言うのである。弟と共にその場に足を運ぶと、そこには「この子こそ跡継ぎである」と名乗り出た三組の親子がいた。困り果てる依頼主夫婦。さて、三人の内誰が「本物」なのか。そして、弓月はそれを占えるのだろうか?
占う度に弱っていく弓月。神社の周囲にうごめく白刃と血の臭い。それぞれが秘密を抱える人々。全てが明らかになるのは、鏡の中か、それとも……?


この物語は、一風変わった「嵐の山荘」(外界から隔絶された状況)に設定されている。神社から出られないという制約によって、内部に閉じ込められた人々は自力で状況を解決せざるを得なくなる。ここで鍵になるのが、弓月の「超能力」である。
しかし、「超能力モノ」の何が歯がゆいって、超常的なパワーで物事を見通す癖に、いつでも肝心なところが見えないというところである。「おや?あれは何だろう?」で、もー引っ張る引っ張る。ちらっと見えて、でも確実ではない。お前は一時間に一枚しか脱がないストリッパーか!無論、全部見えちゃったら面白くあるまい、というのは承知の上のわがままだ。でも、あんまり引っ張りすぎるのもなあ。
また、幕末・維新以降の宗教(神道・仏教)に関する知識が足りず、充分楽しめなかったところもあった。ちょっと残念。★★★☆☆