ゴースト・産科病棟の幻



 超常現象を体験した人は、その「リアルさ」を強調するという。とても幻には見えなかった、と。
 今なら私にもそれが理解できる。あれが「ほんとう」じゃなかったなんて、信じられない。信じたくないよー。
 ということで、「陣痛の幽霊」のお話。


16日(木)
16:00 痛みと張りの間隔が狭まってきたのを自覚。


17:00 1時間メモを取ったところ、間隔が5分おき……のような気がする。病院からの指示は「初産婦は10分おきになったら電話せよ」とのこと。電話して「よく分からないけどこんな感じ」と伝えると、診察するから入院準備して来なさいとのこと。


18:00 内診するも、子宮口はさほど開いていない。しかし、分娩監視装置(以降「モニター」)によると、陣痛は4-5分おきになっていたため、入院を指示される。陣痛室が満床で、臨時の個室に入る。


20:00 痛みが強まる。同行してくれた家人に、「気が紛れる話」を頼むと、「XML」について語ってくれる。まこと得がたい人材であるが、残念ながら相槌すら打てぬほどの状態になる。


22:00 二度目のモニター。陣痛は3-4分おきとなっている。「順調ですよ」とのこと。しかし、子宮口は依然として開かぬまま。


23:30 このままの状況だと、少なくとも数時間以内に分娩ということはまずない、と伝えられる。家人に帰宅してもらう。


2/17(金)
04:00 うとうと……と、あいたたた!と繰り返し、眠れぬ夜を過ごす。


06:00 気付いたら結構すやすや寝ていた。三度目のモニターの結果、陣痛が弱まり、間隔が広がっていることが判明。なんでだ……。


07:00 朝食が出る。食欲のないなりに食べる。


10:00 入院用の個室が用意できたとのことで、そちらに移動。陣痛まるでなし。横になると、ぐーぐー寝る。


12:00 昼食。ぱくぱく食べる。めちゃめちゃ元気。陣痛は不規則で弱く、数十分に一度程度しか現れない。これでは食っちゃ寝してるだけである。


13:00 家人来院。元気になると退屈なので、本を持ってきてもらう。臨死体験を扱った小説「航路」(コニー・ウィリス)。病院内のシーンが多く、入院中に読むにふさわしい選択だ。


14:00 看護婦さんに「このまま陣痛が遠ざかったままなら、一度退院したい」と相談。昨夜の疲れが出ているせいかもしれないから、とりあえず休息を取って、夕方に再度様子を見ようと言われ、昼寝。


18:00 夕食。陣痛は依然として弱く不規則なので、再度退院希望を伝える。


19:00 4度目のモニター。陣痛は実際には規則的に発生してはいるらしいが、いかんせん弱い。そして、子宮のカベは若干薄くなっているものの、開きはまだまだ不足。「退院して動いた方が早まるかも」ということで、退院許可を得る。


20:00 退院。あー、何だったんだ。


 という訳で、かりそめの入院体験でした。
 今も不規則ながら陣痛を自覚し続けてはいるので、ひょっとしたらまたすぐに戻ることになるかもしれない。
 ああ、信じられない。あんなに苦しんだのに……。あれがホンモノの陣痛じゃないんだったら、本当はもっとしんどいのか。分割して味わいたくなかったなあ。


 「猫の日計画」継続進行中……ということで、まだまだ様子見の日々は続く。