神の視点





 愛読しているマンガの最新刊が出た。
 大阪出身・東京在住の二人の男を中心に、彼らの日常をダラダラと描く、非常に肩に力の入らぬストーリー。変人揃いの登場人物(および猫)に何故か友情を覚えてしまう。
 この人の作風はどこか独特(スクリーントーンを使用しない等)なのだが、最も特異なのは、「語り手の不在」である。正確には、登場人物の中に語り手がいない。物語を読者に伝えるのは、「全てを知る者」……つまりは作者自身なのである。小説では珍しくないこの技法(「神の視点」)、マンガで使う人はあまりいないような気がする。そのせいか、この作品はフィクションであるにもかかわらず、読む側としては他人の生活をのぞき見ているような雰囲気を味わうことができる。
 最新刊では、この「お約束」が若干破られ、一人称のエピソードが幾つか混ざっている。その中の、猫の「利休之助」の語りには、猫飼いの共感を呼び起こす何かがある。必見。