聖骸布血盟



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聖骸布血盟 上巻
フリア・ナバロ 白川 貴子
ランダムハウス講談社 2005-09-15
評価

聖骸布血盟 下巻 遙かなる野望  絹の女帝 第1部 ヒストリアン・I 女教皇ヨハンナ (上) ヒストリアン・II

by G-Tools , 2006/10/19



 上下巻、727ページ。二日半掛けて読んだ、久し振りの長編小説である。
 しかし……すんげーつまらなかった。以下、恨みをこめたネタバレ全開の感想。


 この小説は、キリストの遺骸を包んだ亜麻布「聖骸布」を巡るミステリである。
 現在トリノの大聖堂に保管される聖骸布は、放射性炭素年代測定の結果、中世のものであると判明している。つまり、本当にキリストの体に触れていたはずはないものだ。それでも、聖骸布は聖遺物としてカトリック世界で尊ばれ続けている。
 聖骸布を預かるようになって以来、大聖堂はたびたびの不審な事故に見舞われている。主人公マルコはイタリア美術品特捜本部長。事故が多すぎる大聖堂に疑問を抱く彼は、その場所で二年前に窃盗の疑いである男を捕らえ、今度は小火の焼け跡からある男の焼死体を発見する。この二人の共通点、それは舌を切り取られ、指紋をつぶされた、完全に身元不明の男であるということ。彼らは何なのか?その狙いは?何故舌を切り落としているのか?謎は深まるばかり。捜査チームの一員で、美術史の研究家でもあるソフィアと、聖骸布に興味を持つジャーナリストのアナは、歴史を通して聖骸布の謎を探っていく。
 物語は、聖骸布にまつわる過去のエピソードを平行して語る。キリストの死の直前のイスラエルから、十字軍を経てヨーロッパへと至る歴史のさざなみ。マルコたちが探る現代の謎は、ここで徐々に明かされる……ようでいて、あんまり明かされない。
 また、現代のパートでは、舌のない男たちを組織する謎の司祭や、目的が分からぬ謎のエリート集団などの描写が真相を示唆したり、謎を増やしたりしていく。そして、彼らが一堂に会する時、全ての謎が明かされる!……なんてことはない。ある程度明かされる。そして、余計にフラストレーションが溜まる。まるで、わざとがっかりさせるかのようなエンディングは、ある意味一読の価値はあるかもしれない。
 作中に登場するあるジャーナリストが「真相に近付きすぎると命を失う」と盛んにアピールするのだが……まさか、作者は核心を掴んでいながら明かせないのでは!?なんてこたーないだろうな。

 一言で表現するならば、最後まで読んで拍子抜け、というのが正直なところ。登場人物を次々に繰り出し、謎をうず高く積み上げ、エピソードを連綿と連ね、そして最後に全部フロシキに包んでどっかにやっちゃいました。といった感じ。
 登場人物の描写は散漫で、実は本当にマルコが主人公なのかどうかも自信はない。また、「こいつは怪しい」という登場人物が、結果として全員実際に怪しいのには笑ってしまった。そのくせ、「この中に裏切り者がいるのは分かっているんだ」というのは、何故か誰だか分からぬまま終わっちゃうし。なんじゃそりゃ。
 更に、捜査をする人々がマヌケである。ラスヴェガスからCSIを連れて来い!と言いたくなるほど科学捜査抜き。地道〜に歩き回り、一日を徒労の内に終える。そんなことも思いつかなかったんかい!と叫びたくなるようなアイデアに「そ、それは盲点だった」という反応。作者はスペイン人だが、実はイタリア人をバカにしているんだろーか?
 「ダ・ヴィンチ・コード」の二匹目のドジョウを狙ったのかなあ。キリスト教ミステリに弱い私は引っ掛かったが、他のどなたにもオススメできない竜頭蛇尾な作品である。「レックス・ムンディ」以来の大ハズレ。★★☆☆☆