時効警察

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時効警察
三木 聡
角川書店 2007-03
評価

by G-Tools , 2007/04/17

【出版社/著者からの内容紹介】
クセになる笑い満載の大ヒットドラマ『時効警察』の完全ノベライズ!
時効になった事件を趣味で捜査する警察官・霧山修一朗vs犯人。クセになる笑いが満載のノベライズ、早くも文庫で登場!巻末には、脚本・監督はもちろん、熊本課長も演じている岩松了による書き下ろし短編を収録。
【内容(「BOOK」データベースより)】
事件はもう時効ですから。僕がこの件を口外することは一切ありません―。時効になった事件を趣味で捜査する警察官・霧山修一朗VS犯人。一度見たらやみつきの脱力系ドラマ「時効警察」を完全ノベライズ。



最近テレビを入手した。両親が「使わないから」と言って、20インチの液晶テレビ(元はPCのモニターに使用していたもの)をくれたのである。親の愛に深く感謝しつつも、「見ない」ことが習慣になってしまい、全然利用しないままである。
さて、勤務先にちょっと変わった人がいる。二人のお嬢さんの父でもある男性社員で、恒は常識人に見えるのだが、妙なタイミングで妙なことを言い出す癖がある。「はあ……」と返すしかないようなこと(「指毛って色っぽいよね……」とか)がほとんどなのだが、慧眼に唸ったり、意外な着目点に大いに感心させられることも多い。
その人が「時効警察って知ってますか?」と聞いてきたのが、4月の第一金曜日であった。
「知りません。なんですか?じこうけいさつ?」
「ちょっと前にやってたドラマなんですけど、○○さん(私)好きだと思いますよ。来週からまた新しく始まるんで、見てくださいね
いかな理由からか強くオススメされてしまったし、親の愛にも報いなきゃならない(ちょっと違う)ので、そのドラマを見ることにした。だが、第二シーズン(って言うのか?)を見る前に、予習しておかねばなるまい。勉強家の私は、しかしビンボーでもあるので、DVD*1を借りたり買ったりせずに本を読むことにした。
さあ、それが本書である。無趣味な自分を正そうと、時効になった事件を今更捜査することにした、総武警察署時効管理課の変人職員霧山(オダギリジョー)。そんな彼に片思い中で、デートになるといいなあと思いながら捜査に付き合う交通課の三日月(麻生久美子)。どうせ時効事件だから、犯人が分かっても逮捕できないし、する気もない。だいたい時効管理課って何やってるんだよ!?という小説である。
テレビドラマのノベライズなので、映像作品ならば「見りゃ分かる」ことをわざわざ書かねばならない。しかも、役者の個性や魅力なしで語らねばならない。更に、コメディなので演出抜きの文字だけで笑わせなければならない。こりゃタイヘンですよ。ドラマの視聴者が読むなら、追体験のようなもので、「そうそう、ここでこうなるのよねー」と確認しながら楽しむこともできるが、私は事前知識のない読者である。見れば笑えるのかもしれないが、読んでもピンと来ない描写が散見された。また、ミステリとして見るならば、恐ろしい出来である。トリックもアリバイも科学捜査も通常捜査もあったもんじゃない。
しかし、実を言うと結構楽しめた。メチャクチャな事件の、無理矢理な謎解きも笑いながら読めた。本格推理の振りすらしていないので、荒唐無稽なのもお約束の内である。アホらしいと思いつつ、声を出して笑ってしまうようなギャグもあった。巻末に出演者リストがあるのだが、それに気付くまでは「この役はあの役者かなー」などと勝手に想像して全部ハズレだったりするのもまた良かった。イケてないオダギリジョーに恋する麻生久美子のいじらしさも、変人なりに切なくて中々だった。ただし、麻生久美子という役者をほとんど知らないので、頭の中では水野美紀に勝手に変換されていた。なんでだ。
予習を済ませて見たドラマも面白かった。小説同様ムチャクチャな事件の、ハチャメチャな解決を、ピンポイントの特別出演者を楽しみつつ見た。いいなあ、オダジョー。次回もまた見ようっと。そんな訳で、週に一度テレビを見る楽しみができた。相変わらず、それ以外は見ていない。うーん、このストイックな習慣がなんだか楽しい。私も総武署の面々の変人具合にちょっと染められつつあるのかもしれない……。