あほらし屋の鐘が鳴る

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あほらし屋の鐘が鳴る
斎藤 美奈子
文藝春秋 2006-03-10
評価

by G-Tools , 2007/06/02

【内容(「BOOK」データベースより)】
失楽園もののけ姫バイアグラゴーマニズム宣言など、平成のおじさんたちの“勘違い”を、斎藤美奈子が「なにをゴチャゴチャゆうとんねん、あほらし屋の鐘が鳴るわ」とカーン。「女性誌探検隊」では、「an・an」から「暮しの手帖」まであまたある女性誌を俎上に、これまた的確なる情勢分析をほどこします。

  • オジサンたちの行動を分析する「おじさんマインドの研究」と、様々な女性誌を皮肉っぽく解説する「女性誌探検隊」の二部構成。原則として「冗談でネタ」、「女同士でクスクス笑って楽しむ」内容である。男性諸氏が「男性差別だ!」と真剣に怒られるには値しない。
  • ハードボイルドは男性向け「ハーレクイン」である、という話にまずにやにや。そうそう、「だ」「である」でしか会話しない男が現実にいたら、こりゃもう笑うしかないよね。
  • 渡辺淳一の「失楽園」ダイジェスト解説にまた笑う。「『失楽園』は同じパターンのくりかえしです。(1)有名観光地で、(2)おじさま好みの衣装を着たヒロインと、(3)季節の料理を堪能した後、(4)一流の宿でセックス。「ブルーガイド」+「ファッション雑誌」+「グルメガイド」+「ハウトゥーセックス」=『失楽園』」。このかいつまめばお気楽な浮気小説が、命を賭けた純愛ってことになるんだから不思議である、という論調が最高。
  • これ以外にも、「父性の復権」のアナクロニズムを引きつりながら扱ったり、中年男性にとっての「恋愛」とは妻以外の若い女性とセックスすることだと発見したり、母親ならやって当然のことを父親がすると自慢できる「育児参加」の現状を分析したり、男性の感想をお聞きしたいトピックが多い。実際に話すのはちょっとなんだけど。
  • 本書のように中年男性を一括りにするのは乱暴だろうが、実際女の私から見ると彼等の存在は「塊」のように感じられることが多いのである。この塊は、そのまま「世間」というものでもある。いくら私が「何言ってるんだか」と呆れても、世間が言うことこそが常識となる。その歯がゆさを笑いながらときほぐす著者の力量と余裕には感服する。全てに賛同できるわけではないが、面白さという点で言えばぼやき芸・皮肉コラムとしては中々である。