文学賞メッタ斬り
【内容(「BOOK」データベースより)】
文学賞ってなに?芥川賞・直木賞から、話題のホラー小説大賞、メフィスト賞、ファンタジーノベル大賞まで、50を越える国内小説賞について、稀代の読書家二人がアンタッチャブル徹底討論!WEBマガジン「エキサイトブックス」で一大センセーションを巻き起こした掟破りの言いたい放題がさらにパワーアップ。
- 「ミステリ・ブックナビ」でおなじみ(って言っても見てる人ほとんどいないだろうけど)、大森望&豊恕W由美の言いたい放題対談集。
- 何もかもランボーで好き嫌いの激しいトヨザキさんと、一見穏やかで大人しそうなのに実はやっぱり好き嫌いの激しい大森さんの、バランスがいいんだか悪いんだか分からないコンビ。面白いから構わないんだけどね。
- 正直言って私はほとんど気にしないのだが、トヨザキさんの「文体意識」へのこだわりには敬服する。きちんと文章(文意ではなく)を読むことができる人はすばらしい。クノーの「文体練習」読んでみようかな。
- 石田衣良のあざとさや、伊坂幸太郎のナイーブさを論じた箇所に感心。
- 選考委員の好みと偏見(と視野の狭さ)で賞が決まるのだから、文学賞そのものの絶対的価値などないというのはなるほどと納得。ほんとーにむちゃくちゃ言ってる渡辺淳一(直木賞)や、選評で自分の好きな話(時代の閉塞・日本社会の衰退)しかしない石原慎太郎(芥川賞)に選ばれても、素直には喜べないのかも。
- 以前、「女性らしさと社会性に欠如している」と評したトヨザキさんがかわいく思えてきました。恋でしょうか、これは。文体の美しい文学作品、世界観が確立されているファンタジー作品を愛し、「クビキリサイクル」の表紙を「うわー、この装丁は42歳にはきっつぅ〜」と言ったり、会ったことのない北方謙三から電話で「女性ならではの感性で」と乱歩賞の下読みを依頼されて、「まさかこんなオヤジみたいなヤツとは想像もしてなかったんでしょうねー」と笑ったり、とてもかわいらしい人ではないですか。なんか好きになってしまったよ。お姉さまと呼ばせていただきたい。女性らしさと社会性と協調性には欠けてますけどね。
- 地方の文学賞を総合してリーグを作り、芥川賞・直木賞などをシード枠に入れた「文学賞甲子園」やろーぜ!ついでにこれで賭場も張ろうぜ!という提案が面白い。荒唐無稽なんだけど、やったら確実に出版業界は盛り上がりますな。私、下読みやりたいです。
- 作家でもなんでもない私だが、選べるなら「泉鏡花文学賞」が欲しい。料亭でのおもてなしがついてくるんだって!
- 読んでみたくなった本。
そうそう、偶然にもこの3冊に共通してけなされている作家が一人。渡辺淳一大先生である。佐野洋子に大笑いされ、斉藤美奈子におちょくられ、トヨザキ・大森コンビに呆れられていらっしゃいます。それでも売れてるんだから、資本主義社会での正義は渡辺淳一の側にあると言えよう。