文学的商品学

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文学的商品学
斎藤 美奈子
紀伊国屋書店 2004-02-16
評価

by G-Tools , 2007/06/09

【出版社/著者からの内容紹介】
商品情報を読むように、小説を読んでみよう。文学の面白さはストーリーや 登場人物の魅力だけではない。作品に登場するモノやその描写を見ていくと、 思いもかけなかった読み方ができることに気づくだろう。ファッション,風俗,ホテル,バンド,食べ物,そして「貧乏」。9つのテーマをめぐって, 村上春樹から渡辺淳一まで読みくらべる,痛快無比の文芸評論。

  • 最近斉藤美奈子を続けて読んでいる。読みやすくて面白いのだ。この人の評論を読んでいると、「文学評論」というものをきちんと学びたくなってくる。
  • 小説(特に現代を舞台として、登場人物の衣類が描写されるもの)のファッションは、私自身いつも気になる要素の一つである。漫画や映画では、「なんでそんな服を着ているんだ!」と言いたくなる場面は多いが、小説の描写でも同じような気分になることがあるのだ。まあ、漫画と違って書き手がファッションに無関心・不案内な場合には、描写そのものが極端に少ないんだけど。
  • そんな、小説の本筋に関係ない「商品」が出てくる場面を集めて、ジャンル別に評論したのが本書である。衣服が描写される時、それは外見描写を装った内面描写や状況説明なのであるとか、一人称で自らの衣服を語る描写が出てきたら、それは非日常的な状況を示唆するとか、男が女の服装を一生懸命見る描写があるのは、それが脱がされていく時だけであるとかいった分析で綴られている。
  • 文章で伝えるに困難なもの(音や匂い、記号、ブランドイメージなど)をいかにして小説が表現しているかを論じた作品といえよう。