アリスの服が着たい


内容紹介
不思議の国のアリス』や『小公子』から子供服は誕生した。その誕生と普及に絵本が果たした役割と、服に投影された人々の欲望を描く。

児童文学作品に登場する「無垢でかわいらしい」主人公の服は、従来の服にはなかった「子供らしさ」を価値として規定し、発信することによって子供服という商品を誕生させた。ヴィクトリア朝後期、中産階級の勃興と消費文化の確立を背景に、児童文学作品から子供服が生まれた経緯を辿り、服に投影された人々の欲望を描き出す。

[関違書] 同著者 『おとぎの国のモード』 (勁草書房刊)

本書は、ヴィクトリア朝期からエドワード朝期のイギリスで、いかにして「子供服」が誕生し、興隆したかを解説するものである。
私はものの成り立ちとか、仕組みとかを解説されるのにめっぽう弱いので、こういう話が大好きである。工業化によって富裕な中産階級が生まれる→生活の余裕を育児費用に充てる→挿絵入り児童文学の流行(「不思議の国のアリス」、グリーナウェイの作品等)→祖父母の時代を懐古する彼らの趣味が、特別な子供用衣類を求める消費者心理にマッチ→最初は仮装用から、徐々に日常着として流行……というのが、一つの流れらしい。この辺りを解きほぐすシークエンスにはわくわくさせられた。
読み終えた今、私はセーラーカラーの服が欲しくてしかたない。かん子さん用じゃなくて、自分の……。