光村ライブラリー5巻 朝のリレー ほか


出版社からのコメント
昭和30年から平成14年までに国語教科書に掲載されたなつかしい作品との出会い。
第5巻 詩
朝のリレー(谷川俊太郎)/野原はうたう(工藤直子)/野のまつり(新川和江)/白い馬(高田敏子)/足どり(竹中郁)/花(村野四郎)/春よ、来い(松任谷由実)/ちょう(百田宗治)/春の朝(R=ブラウニング)/山のあなた(K=ブッセ)/ふるさと(室生犀星)/忘春(室生犀星)/おおきな木(長田弘)/雑草(北川冬彦)/山頂から(小野十三郎)/木(田村隆一)/大阿蘇三好達治)/すずめ(ツルゲーネフ)/あどけない話(高村光太郎)/道程(高村光太郎)/母をおもう(八木重吉)/素朴な琴(八木重吉)/木琴(金井直)/ヒロシマ神話(嵯峨信之)/火の記憶(木下夕爾)/わたしが一番きれいだったとき(茨木のり子)/ナワ飛びする少女(藤原定)/ある日ある時(黒田三郎)/紙風船黒田三郎)/秋(R=M=リルケ)/強者の詩(山村暮鳥)/月夜の浜辺(中原中也)/夕焼け(吉野弘)/木(草野心平)/落葉松(北原白秋)/初恋(島崎藤村)/落葉(P=ベルレーヌ)/夢(L=ヒューズ)/雨ニモマケズ宮沢賢治)/火を囲んで(石川道雄)/第一ページ(丸山薫)/私の前にある鍋とお釜と燃える火と(石垣りん



★★★★☆
先日読んだ同シリーズの最終巻。
私は詩を読むのが好きだ。ただし、難解なものは好まない。そんな私には、教科書に出ていた詩はちょうどレベルが合っている。
収録作品で思い出深かったのは、「山のあなた」。

山のあなたの空遠く
「幸ひ」住むと人のいふ。
ああ、われひとと尋めゆきて、(とめゆきて)
涙さしぐみ、かへりきぬ。
山のあなたになほ遠く
「幸ひ」住むと人のいふ。

国語ではなく、中学のペン習字の授業で出てきたのだが、私は大人になるまで「あなた」を「you」だと思い込んでいた。「山に住んでいるあなた、その場所に『幸ひ』があるのね♪」という恋歌なのだと勘違いしていた。正しくは、「あなた」は「彼方」である。分かんねーよ!という衝撃で印象深い作品である。(我ながら低レベルだ……。)
初めて読んだ当時よりも、今の方が感じるものが多いことに気付いた。こどもの時分は、「鑑賞する」というよりも、何か直感的に捉えて楽しんでいたのだろう。三好達治の「大阿蘇」も、中学生の時は退屈だった。「馬が草食ってるだけじゃん」てなもんである。今読み返すと、その情景描写の力強さ、ゆっくりと時の流れる様を実感できることに驚くような、実に瑞々しい作品である。大人になって嬉しいなあ。達治なら「甃(いし)のうえ」の方が好きだけど。
初めて読む作品も多い。「おう なつだぜ/おれは げんきだぜ」で始まる「おれはかまきり」(「野原はうたう」の一部、「かまきり りゅうじ」名義)が最も面白く、記憶に残る。夏が来たら、きっと私も言ってしまうだろう。「おう あついぜ/おれは がんばるぜ」「わくわくするほど/きまってるぜ」。
そんな中、ユーミンの「春よ、来い」には大いに違和感を覚えた。部分的に使われる古語(風言い回し)がヘンなのよね。