短評:誰でもない男の裁判

誰でもない男の裁判 (晶文社ミステリ)誰でもない男の裁判 (晶文社ミステリ)
A・H・Z・カー 田中 融二

晶文社 2004-06-17
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出版社/著者からの内容紹介/Amazonより
「もし神がいるのなら、おれを殺してみろ!」無神論者の作家が講演中に叫んだ次の瞬間、一発の銃弾がその胸を貫いた。逮捕された犯人はただ「声」に命じられたと繰り返すのみ。名無しの男に対する擁護運動が盛り上がるなか、現場に居合わせたミラード神父は事件の調査委員長にまつりあげられてしまう。しかし、全国から寄せられた手紙の一通に男が異様な表情をみせたとき、神父の胸に恐ろしい疑惑が芽生え始める……。
 信仰と真実の相剋というテーマに真正面から取り組んだ異色中篇『誰でもない男の裁判』、殺人事件に巻き込まれた詩人探偵がウィリアム・ブレイクの詩から真相に到達する『虎よ! 虎よ!』、ふとしたはずみで娘の可愛がっていた猫を殺してしまった牧師の苦悩を描いて、殺人事件以上の衝撃をもたらす『黒い小猫』など、EQMMコンテスト入選作を中心に、エラリイ・クイーン、山口雅也らが絶賛する短篇ミステリの名手A・H・Z・カーの傑作全8篇を収録。日本オリジナル編集。

  • ミステリを単なる謎解き以上の物として楽しみたい読者向けの上質な短編集。登場人物に類型的な所が少なく、魅力的。表題作は勿論、内なる暴力に向き合う「黒い子猫」「虎よ!虎よ!」、探偵役が実に魅力的かつ親近感を覚える「姓名判断殺人事件」が面白かった。「ティモシー・マークルの選択」も良作。
  • ところで、巻末作品リストの邦訳短編に、Hit and Run「轢き逃げ」福島正実訳とあるのだが、これはもしかしたら、高校時代に英語の教科書「Progress」で読んで忘れ難い、あの短編だろうか?忘れ難いとか言って、実はオチ以外思い出せないし、教科書用に作られた作品と思い込んで、探したこともなかったのだが。誰かProgress使っていた方、覚えていませんか〜?