短評:ゴーストライター

ゴーストライター (講談社文庫)ゴーストライター (講談社文庫)
ロバート・ハリス 熊谷 千寿

講談社 2009-09-15
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内容紹介/Amazonより
見た目の華やかさで人気を博したものの、イラク戦争を境に人気を失った元首相、アダム・ラングのゴーストライターとなった「私」は、孤島に滞在中の彼から聞き取り取材を始めた。だが捗らない原稿に悩まされるうちに、執筆途中で水死体となって発見された前任者の死因に疑問を持つようになる。実際に英国首相と昵懇だった著者が描く謀略スリラー。

  • 前英国首相の回顧録執筆を“手伝う”ゴーストライターの「回顧録」という体裁のミステリ。筋立は非常に面白く、登場人物の造形、社会状況の設定もうまい。語り手の心情に心地良く振り回された。
  • しかし、文体は好みではない。シニカルで複雑な比喩の多用、会話文の不自然な翻訳(老獪な男性政治家が、突然「ご冗談でしょ」と言い出す等)、共に違和感。だってさあ、

〈ラインハート•パブリッシングUK〉は、1990年代に企業が激しい病的盗癖/クレプトマニアにでもなったかのような時代に勝ち取った、古くからある五つの会社から成り立っている。

って、こうやって入力するとどーってことないけど、最初読んだ時は、まじ意味不明だったよ。

  • 本作は映画化されており、主人公をユアン•マグレガー、前首相をピアース•ブロスナンが演じている。ユアンが若干若い以外は、本作のイメージにあっており、2人の顔を浮かべながら読んだ。文句はあるが、それなりに楽しめたし、スリリングだった。主人公が名無しであることの効果が、じわりと腑に落ちる終わり方も良い。