「デイ・アフター・トゥモロー」

 邦題は「あさっての天気」ウソです。


 台風に降り込められることが分かっていたので、DVDを色々借りてきた内の一枚。以降ネタバレありなので、これから真っ白な心で見たい人はお読みにならぬように。


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 実は結構馬鹿にしていました。大災害パニックもの、それも世界的に壊滅状態になるほどのスゴイやつ。ははあ、「アルマゲドン」だな、ぷぷぷ。と思っていたのです。家族愛と愛国心とトンデモ科学に、CGで作られたスペクタクルでしょ、どうせ、と。役者はどれも「どっかで見たような」脇役大集合の布陣だし。
 ところがどっこい、しっかり感心してしまいました。感動は情緒的なものですが、感心はいくらか理性によるものなので、私にとっては後者の方が評価は高くなります。正直、気象や科学のことは分からないので、これがトンデモなのかどうかは分かりません。しかし(突っ込み所満載だったアルマゲドンに比べたら)説得力があった事は確か。普段パニックやアクション映画に興味のない、本を愛する人にもオススメの一本。
 主人公ジャックは政府機関で働く古気象学者。古代氷河期を調査することで、現在の地球温暖化によって起こりうる状況を研究しています。しかし、二酸化炭素排出規制を求めた京都議定書を軽視する政府には理解を得られず、「温暖化による極氷融解が世界に氷河期をもたらす」という警告は無視されます。
 仕事人間で、息子とは疎遠。NYに旅立つ息子を空港まで送りますが、今一つ上手くいきません。
 そこへ、異常気象が襲います。ジャックが「数百年後に起こりうる」と危惧していた状況が、今発生したのです。海水温が急降下し、起こりえないはずの状況で巨大な嵐が発生し、地球全体を覆います。都市部の竜巻はビルを抉り、強風は車を吹き飛ばし、大津波がマンハッタンを飲み込みます。ジャックの友人である老気象学者は、最後の通話で言います。"Save as many as you can."出来るだけ多くの命を救ってくれ。この状況で、一体どれほどの人命を救うことが出来るでしょう?
 NYにいる主人公の息子サムは危うく難を逃れ、NY市立図書館に友人と共に避難。一回だけつながった父との通話で、彼が助けに行くまで動かないこと、雪嵐は強大で逃れようがないので、零下100℃にも達する「嵐の目」を避けるため決して外には出ないことを約束します。しかし、かりそめの吹雪の止み間に出て行く他の人たちを止めることは出来ませんでした。
 ジャックはようやく彼の説を受け入れた政府に「南部の全州をメキシコ以南に避難させろ」と提言。その後、ワシントンDCからNYへと旅立ちます。長年の同僚フランク、ジェイソンも一緒に。車は途中までしか使えず、以降は南極調査の装備で徒歩での旅となります。
 その間、NYのサムは数人の仲間と共に図書館に篭り、暖を取るために本を火にくべていきます。このシーンは本好きにとって非常に辛いものがありますが、それは登場人物によって代弁されています。
「これはニーチェだぞ。燃やせない。」「妹に惚れてたヘンタイよ。燃やしていいわ。」「でもニーチェだぞ。」「お二人さん、ここに税法の本がある。こっちを気兼ねなく燃やそう。」
「これはグーテンベルグ聖書だ。人類初の書籍。本は人類最高の発明だ。もし我々が滅びるとしても、これを残すことで文明の証明となる。」図書館司書の言葉です。泣けます。(ちなみに、同図書館は実際にグーテンベルグ聖書を保有しています。)NY図書館は漫画「バナナフィッシュ」、映画「セブン」、「ゴーストバスターズ」でもお馴染みの場所ですが、ここまで長い時間舞台となっている映画は初めて見ました。
 父は息子を助けられるのか?南への避難は間に合うのか?アメリカは二酸化炭素排出をマジメに考え始めるのか?グーテンベルグ聖書は燃やされずにすむのか?てゆーかマイナス110℃ってどーよ。バナナで釘打つ間もなく死ぬって。
 見終えて感慨深い気持ちのままカーテンを開けると、東京を台風が直撃していました。暗い空から強い風の運ぶ雨粒が窓を打ち、視界はわずか。外で何が起きているのかなんて、見えはしないのでした。