テスタメント

テスタメント

テスタメント

 嫌われ者の大富豪が、恐ろしく底意地の悪い遺言を残して自殺する。(どっかで聞いたような設定だ。)三度の結婚で6人の子供をもうけたが、そのうちの誰一人にも遺産を残さず、誰にも知られていなかった隠し子の娘に11億ドルの資産を遺贈。しかし、彼女は父親と縁を切り、ブラジル奥地で宣教の任に就いている。電話もなく、道路も通じぬ大湿地帯のどこかにいるはずの彼女を探すのは、依存症で身を持ち崩した中年弁護士。
 6人の子供たちは遺言状を巡って争い、弁護士達はそこに取り付いて甘い汁をすすり、判事は名声を求めて正義を忘れる。嘘と欺瞞が渦巻く。いやなやつばっかり出て来る。
 中年弁護士は宣教師の娘を探し出す中で、自分の人生を振り返っていく。有名な敏腕弁護士で、高級車を乗り回し、妻と家庭を顧みず仕事と女に打ち込んだ。そして、アルコールとドラッグに溺れ、全てを失った。この訴訟に関わることは、一線への復帰の足掛かりとなるだろうが、それは本当に自分が望むことなのだろうか……?
 この先どうなるどうなる〜?とぐいぐい引っ張る力は、流石グリシャム。人生の酸いを存分に見せた後で、提示される甘美さは、少し寂しい。「こうなってほしかったなあ」という勝手な願望で、★一個減とする。だって……もっと幸せになってほしかったんだよ。★★★☆☆