彼のタップダンス

メリーポピンズ [DVD]

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メリー・ポピンズ」という映画をご存知だろうか?
チキ・チキ・バン・バン [DVD]

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チキ・チキ・バン・バン」は?
私は両方とも大好きで、十代の頃は父が録画してくれたこの二つのミュージカル映画を、飽くことなく幾度も見返したものだ。
好きなナンバーは、「A Spoonful of Sugar」「Supercalifragilistic-expialidocious」(メリー・ポピンズ)、「Truly Scrumptious」「Posh!」(チキ・チキ)。映画をご存じなくとも、チムチムニーチムチムニー♪や、チキバンバンチキチキバンバン♪を耳にされたことはあるかもしれない。


さて、この二つの映画に出演している俳優がいる。その名はディック・ヴァン・ダイク
「メリー」では大道芸人兼煙突掃除屋でジュリー・アンドリュースの脇を固めた。アニメーションのペンギンとタップを踊っていたことをご記憶の方もいるかも。
「チキ」では主演である。二人の子供を持つやもめの貧乏発明家。
中学二年の時に、夏休みの宿題の自由作文に彼を「理想の男性」と書いたことを思い出す。陽気で笑顔が素敵で、スリムで長身、ハンサムな上に歌って踊れるのだ!今思えば、中学生が作文に何書いているんだと言いたいが……。
ともあれ、今でも彼のことは好きなのだが、以降それ以外の出演作を見たことがなかった。そうして月日は流れ、私の理想も有為転変、彼のことはすっかり思い出になっていた。


ところで、私は老人探偵ものの海外ドラマが好きである。ジェシカおばさんを放送していれば、例え何回目だろうと見てしまうし、ミス・マープルも見逃せない。そんなジャンルに、最近新顔が加わった。「Dr.マーク・スローン」。CATVのスーパーチャンネルで放映中である。
病院の内科医が探偵役なのだが、これが白髪頭のじーさまである。背が高くて、キュートな笑顔。時々見せる腰痛の演技に説得力がある。刑事である息子には、「親父は手を出すな」とことあるごとに釘を刺される元気者だ。お気楽な内容なので、気軽に何度か見ていた。ある日、マジメに最初のキャスト名から見て驚愕した。実際、叫んだ。「うっそー!」。あまりの大声に、猫が逃げていった。
主人公マーク・スローンを演じるのは、あのディック・ヴァン・ダイクではないか。調べてみると、今年でなんと79歳。(ドラマ放映は93〜01年・現在放送中のシーズンはほぼ10年前のもの。)
そうと知れば頷ける。あの長身、あの笑顔、あの大きな口!私の(かつての)憧れの人ではないか!しかも、息子役はディックの実子、バリー・ヴァン・ダイク。彼はナイトライダーの後番組だった「エアー・ウルフ」(ヘリコプターもの・好みじゃなくて実は一回しか見ていない)に出ていたことは知っていたが……こんなところで親子共演していたのかあ。息子には興味ないや。


子供の頃に好きだった映画スターは、今でも特別な存在だ。アカデミー賞授賞式でジュリー・アンドリュースが出てきた時には、起立して拍手した。ジーン・ケリードナルド・オコナーが亡くなった時に流した涙は、感傷以上のものだった。彼らは、私を育ててくれた人たちの内の重要な一部なのだ。


今日見たエピソードの中で、マーク・スローン医師は誕生日にタップシューズをプレゼントされていた。彼はそれを履き、少し踊った。嬉しくて涙が出た。彼は、今もとても素敵だった。



写真左:メリー・ポピンズより(左端の黒服。)
写真右:Dr.マーク・スローン役