デブリン・トレーシー

 ウォーレン・マーフィのトレース・シリーズ(7作・ハヤカワミステリ・多分絶版)主人公。
 トレースはヴェガスに住むフリーの保険調査員。兼アル中で元ギャンブラー。ルームメイトはカジノのディーラー兼パートタイムの娼婦、日系イタリアンのミチコ・マンジーニ(通称チコ)。NYに住む父親はアイルランド系元警官。ユダヤ系の母親は現役のモンスター。離婚した元妻をこの世で最も恐れている。
 気が向いたときに調査をするが、基本的には無能。歩き回って、話を聞いて、よく分かんないけど襲われて、手掛かりはあるような気がするけど不明のまま、そこに酒瓶があれば取りあえず空け、ユーワクがあればその場に応じて受けたり断ったりし、あちこちで人をおちょくり、ジョークをする間に探偵稼業をする振りをしている。結局最後はチコに相談し、彼女が事件を解決する。
 徹頭徹尾ジョークの応酬。余りの面白さに原文を読みたくなったものの、日本だけでなくアメリカでも既に絶版。仕方なく古本で購入して読んだ。原文もいいが、田村 義進氏の翻訳に感動。

という訳で……

名探偵一人に、軽薄探偵二人。ベルギー人一人に、アメリカ人二人。ハゲ二人に、ふさふさ一人(トレースはハゲてない)。そして全員意地でも独身、という結果になった。
 ニック・ケアリーやヴィク・ウォーシャウスキーを押しのけて選んだ面々がこいつらか……と思うと、地震でぐらぐらする視界の中、人生すら省みたくなる31歳の秋なのだった。