殺人現場で朝食を 

殺人現場で朝食を―ケータリング探偵マデリン (ハヤカワ・ミステリ文庫)

殺人現場で朝食を―ケータリング探偵マデリン (ハヤカワ・ミステリ文庫)

「死人主催晩餐会」に続く、「ケータリング探偵マデリン」第二弾。なんとかならんのか、この副題。


前回も書いたが、主人公は仕出し弁当屋と言うよりは、むしろパーティの総合監督兼演出といった仕事をしており、本作ではその要素がいっそう強まっている。何せ、今回はロサンゼルスを訪れるローマ法王歓迎朝食会である。TVプロデューサーのハロウィンパーティからは隔世の感がある。なぜにかくも大舞台に立てたか?コネである。マデリンのかつてのクラスメートにして元婚約者、現イエズス会修道士のザヴィアからの依頼なのだ。
彼は組織の中で修道士の古いレシピを再現する試みをしており、手伝うマデリンは、革装丁の古書の中から殺人を告白するラテン語のメモを発見する。そして、それについて尋ねた老聖職者の回顧録に潜む、ナチスバチカンのただならぬ関係と秘密。ある修道士の死。過去の教皇の死。失われたロシア皇帝の財宝。更に、婚約までした仲なのに、何故ザヴィアは信仰を選びマデリンを捨てたのか?……謎てんこもり、幕の内弁当状態である。


しかし、この弁当、ややとっ散らかっている。今回も、放置されたり、ただひたすら思わせぶりなだけでうまく機能していない伏線多数。何故殺人の取り違えが起こったの?あの「怪しい」と言われていた人は結局関係ないの?これは自然死なの他殺なの?うわーい、誰かチェック表を作ってくれー。


それでも、今回も料理の描写は魅力的だ。「チェリーを練りこんだサワードウのしっとりとしたドーナツ」、「プロシュート(生ハムの一)を敷いたトーストにポーチドエッグを乗せ、更にネギのオイルを振り掛けたもの」、「卵たっぷり、皮パリパリ、濃厚な味のブリオッシュ」、「アスパラガス入りオムレツのアボカドとベーコン添え」……ああ太りそう。登場人物の一人も、主人公に向かって言う。「きみといると、腹が減ってくる」。そう、この美点で★一個増やしていい。


今回は1:多忙な脚本家アーロ、2:前作で彼女といい雰囲気になった刑事ホネット、3:元婚約者にして修道士のザヴィア、4:ビジネスパートナーのウェスリー、という四人の男が入れ替わり立ち代わりマデリンの前に現れる。食に無関心で滅多に会えない多忙な恋人か、それとも他の誰かを選ぶのか?というサイドストーリーも語られる。しかし、ご飯の前に男なんぞどうでもいい。(私の予想では、紆余曲折の末4:ウェスリーとくっつくと見た。)★★★☆☆