呪のデュマ倶楽部
- 作者: アルトゥーロ・ペレス・レべルテ,大熊榮
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1996/11/26
- メディア: 単行本
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- 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
- 発売日: 2004/06/25
- メディア: DVD
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そして読み終えた今、私は思う。ロマン・ポランスキーすげーよ!この魅力的な設定の退屈な小説を、よくもあそこまでまとめなおして映画化したもんだ。
吉野朔実が版画のことにしか触れなかったのもよく分かる。映画を先に見ちゃいけない小説の一つかもしれない。
シノプシスは本当に魅力的だ。
「本の探偵」ルーカス・コルソは、依頼を受けて稀覯本を探すことを生業としている。一冊の揺籃期本(1501年以前の印刷本)に何千ドルも支払う用意はあるが、自分の手を汚す気はない趣味人のために、手段を選ばず本を探し出す「書物狩猟家」だ。
彼はある日友人からアレクサンドル・デュマの手稿「アンジューの葡萄酒」(「三銃士」の42章)の真贋確認を依頼される。それと平行して、トレドの富豪ボルハからも、彼の持つ「影の王国への九つの扉」という本の奇妙な真贋鑑定を依頼される。
この本は、世界に三冊しか現存しない究極の稀覯本として、また悪魔を呼び出す一種のマニュアルとしても名高い書物である。依頼主のボルハは、彼の持つ一冊が偽物ではないかと疑い、他の二冊と引き比べることで本物を見つけ出し、それを手に入れたいと望んでいる。
依頼を受けてスペイン―ポルトガル―フランスを旅するコルソの前に現れる不思議な美少女、企まれる襲撃と強奪、各地に現れる、ロシュフォール伯爵を思わせる顔に傷のある男と、ミレディーのような百合の刺青を持つ美女……そして連なる死。
狙われているのはデュマの手稿なのか、悪魔の祈祷書なのか。そして、それを企てているのは誰なのか。さらに、その目的は?「三銃士」を想起させる断片をつなぎ合わせ、三つの国を旅したコルソが見出すものは……?
ね、面白そうでしょ?
しかし、私には退屈だった。
知識や教養が小説に追い付いていない部分はある。それは認める。だから、古書に詳しく、三銃士を愛読している人には、きっともっと面白く読めるのだと思う。
三銃士を読んだことがなく、「オチ」重視の読者である私にとっては、「あとちょっと読めば『そういうことだったのか!』ってすっきりできるはず」と信じて自らを鼓舞しなければ投げ出してしまいそうだった。
デュマに関する史実などは興味深かっただけに、消化不良な気分がひたすらに残念である。
構成にはウマイところもある。「三銃士」だけでなく、「シャーロック・ホームズ」も作品の中を流れる太い血管の一本である。また、冒頭にさらりと触れられるクリスティーの「アクロイド殺し」も、XV章まで読むと「なるほど!」という描写であったことが分かる。(そこが唯一のスッキリポイントだったのかもしれない……。)
文中の空白は、マウスでドラッグして反転させると中の文字が見えます。
あー、また時間の掛かる本を読んでしまった!★★☆☆☆