ラッシュライフ

ラッシュライフ (新潮ミステリー倶楽部)

ラッシュライフ (新潮ミステリー倶楽部)

落ち込んだ気分を払拭するべく読み始めた、私にとって四冊目の伊坂幸太郎
しょっちゅう「勝手に期待、勝手に失望」を繰り返している私としては、こういう時こそ期待しすぎぬよう用心していた。
しかし、幸運にも杞憂だった。この幸運が続くことを望む。


舞台は仙台。物語はある五組の男女(と犬)の視点で描かれる。
同じ場所を見る別々の目が、様々な状況へと散らばって行く。傲慢な画商と若い画家、気のいい泥棒、孤独な青年、企みを抱く男女、そして失業した中年男。
背景を流れるのは、バラバラ殺人と生き返る死体の都市伝説、カリスマ的宗教指導者、エッシャーの絵、そして四つの綴りの「ラッシュ」。更に、音楽。ビートルズコルトレーンボブ・ディラン
語られる彼等のエピソードは、時に不快で時に愉快で、胸に詰まりわくわくし、緊張して安心して、そして最後には豊潤な人生が待っている。
パズルのピースがはまる快感、あるべきものがあるべき所に戻る気持ち良さを堪能した。最後の方は、もう膝を打ちすぎて痛いくらいだったよ((c)ナンシー関)。
「腑に落ちたい」気分の人に心からオススメ。★★★★☆


伊坂幸太郎の仙台は、それ自体が独立した一つの惑星のようだ。
本作を読む人は、それを微笑みながら実感するだろう。
世界はつながっている。私は、彼の「つなげ方」がとても好きだ。