「三匹の熊」の真実

私はケーブルテレビが好きだ。
多チャンネルを讃えよ。何十も番組があれば、どこかしらで自分が興味を持てるものを放送している。
何も見るものがない……という気分になることが、皆無というわけではない。だいたい、一度も見たことないゴルフ関連のチャンネルが3つもあるのは無駄なんだよ!とか、旅行関係の情報番組を謳っているチャンネルなのになんで深夜になると女の子が脱いでるんだよ!、とかの不満(?)もある。
それでも私はケーブルテレビを嫌いになれません。ということで、目的の番組がない時は「ディスカバリーチャンネル」の出番である。CSIラスヴェガスのグリッソム主任も見ているという、アメリカ製のドキュメンタリー専門チャンネル。海外旅行の際などに、飛行機の中で見たことがある方も多いかと思う。
「ドキュメンタリー」という言葉には、ある程度の重々しさがある。真面目なジャーナリストが、社会や自然の真実を追究してそうな雰囲気がある。しかし、ディスカバリーチャンネルはそれだけではない。無論、マジメなものだってある。しかし、真夏の車内で後部座席に置いた缶詰が爆発して運転手の後頭部を直撃……などの都市伝説を、実際に実験して検証したりヘンなお兄さんが世界を旅して食いまくったり……結構ヘンな番組も多い。


真剣に見るときもあれば、時間つぶしにつけているだけのこともある。
昨夜も、マジメに見ていたわけではない。「嘘交じりの本当の話」Mostly True Stories: Urban Legends Revealedというシリーズの中の一回。都市伝説のようで、実は本当にあったかもしれない話を検証するというものだ。
態度の悪いテレフォン・オペレータを恨んだ男が、彼女に匿名で花束を贈り、社屋から自分の贈った花束を持って出てきた女性をライフルで撃ち殺す……という事件は本当にあったのでしょうか……?とかそんなエピソードを挙げていく中で、CMを挟んだ小ネタがあった。
童話『三匹の熊』は、元々はホームレスの老女が主人公の悲惨な話だった。ホントの話か都市伝説か、皆さんはお分かりですか?」というものだ。


さて、この「三匹の熊」のお話をご存知だろうか。以下は私が記憶するところの、童話「さんびきのクマ」である。

 森の中にクマの親子が住んでいました。大きなお父さん、中くらいのお母さん、そして小さなクマの男の子の家族です。童話のクマは洞窟なんかには住みません。小さなおうちに住んでいます。かわいいおうちの中には、おいしいスープを乗っけるテーブルや、のんびりするためのゆりいすや、ふかふかおふとんのベッドがありました。
 さて、お天気のいいある日のこと。クマの家族はみんなでお散歩に出掛けました。(マタギに注意。)帰ってきたらすぐ食べられるように、テーブルの上にはあったかいスープが用意されています。
 そこへ、森の中で道に迷った小さな女の子がやってきました。ずうっと歩いてくたくたで、おなかはペコペコ、もう一歩だって歩けません。そんな時、女の子はクマのおうちを見付けました。
「なんてかわいらしいおうちなんでしょう。」
 女の子は居住者の許可も取らずに不法侵入しました。テーブルにはほかほかのスープがお皿に入って置かれています。なんて保温性の高い容器なんでしょう。
「まあ、おいしそうなスープ。」
 大きなお皿と中くらいのお皿と小さなお皿。女の子は、コグマのための小さなお皿に入ったスープを残らず飲んでしまいました。窃盗です。
 おなかがふくれると、のんびりしたくなります。女の子は、暖炉の前にゆりいすがあるのを見付けました。
「まあ、なんて気持ちよさそうないす。」
 大きなゆりいすと中くらいのゆりいすと小さなゆりいす。女の子は、コグマの小さなゆりいすに座ってみました。すると、どうでしょう。小さないすはがたーん、壊れてしまいました。今度は器物破損です。
 部屋を次々に改めていくと、女の子は寝室を見付けました。
「まあ、なんてやわらかそうなおふとん。」
 大きなベッドと中くらいのベッドと小さなベッド。女の子は、コグマの小さなベッドに入り……そのまま眠ってしまいました。
 さて、クマの家族がお散歩から無事帰還しました。すると、おうちの中がちょっとヘンな様子です。
「ボクのお皿がからっぽだよ!」
「ボクのゆりいすを誰かがこわしたよ!」
 コグマは被害を訴えます。
 そして、クマの家族が寝室をのぞくと、そこにはすやすやと眠るかわいらしい女の子の姿がありました……。

という童話である。語り手の邪悪な心によって、若干歪曲されている可能性もあるが、まあこんな感じの可愛らしいお話である。少女による軽犯罪は見られるものの、死人も殺人も殺クマもないのどかなお話だ。資料によってイギリスの昔話だの、ロシア民話だのと出典がバラバラなのが一番のミステリかもしれない。

3びきのくま―ロシア民話より (BOOKS POOKA)

3びきのくま―ロシア民話より (BOOKS POOKA)

前述の番組は、このほのぼのストーリーを、陰惨なホラーだというのである。「本当は怖い某」などというものが一時期流行ったが、そういった類のものだろうか。
CM明けに、女性司会者が明るく説明してくれる。
「『三匹の熊』の主人公は、元々は宿無しの老婆でした。熊の家に入って食事をし、眠った老婆は、熊たちに溺れさせられ、火で焼かれ、最後には教会の尖塔に串刺しにされて殺されました。
……え?
「それでは次の話題です。」
……え?それだけ?どこのどういう話でそうなってるんだ?うわーん、気になるよーっ!


検索するも、この内容は発見できず。裏付け取れぬまま、何だか気持ち悪いぞ。
3/30に再放送予定なので、今度は録画してしっかり確認せねば……。