ともだち回路

我が家の猫には、ちょっと素っ気ないところがある。抱っこはあまり好きではないし、膝の上にも滅多に乗らない。名前を呼べば三回に一回は振り向く(後の二回は無視か、尻尾だけで返事のどちらか)が、おいでと言ってこちらに来るのは四回に一回程度の割合である。しばし見つめ合った後に、ぷいとそっぽを向いたり、あらぬ方向へ歩き去ったりする。
猫呼び寄せ率、二割五分……こんなんじゃレギュラーになれない(なんのだ)。
しかし、敵意がある訳でもない。「そういう気分」の時には、遠くから「わおーん」とか「ぐにー」とか鳴いて、「やる気(遊びたいからお前も付き合え!というやる気)」をアピールする。階下に気を遣いつつ鬼ごっこをすると、尻尾を膨らまし、目をまん丸にしてはしゃぐのだ。出掛けるときは見送ってくれるし、帰れば迎えてくれる。決して嫌われてはいない。撫でてやれば腹を出して喜ぶし、さみしくなれば柔らかく頭突きをしてくる。まるで甘えない訳でもないのだ。
けれども、普段は付かず離れずの距離に箱座りして、寄るでもなし逃げるでもなし。ああ、膝の上で眠ってほしいなあ。
家人にもベタベタすることはないが、私に接するよりも親密なような気がする。おそらく、彼を猫の一種だと思っているのだろう。ふたりとも夜型だし。ふたりともよく床で腹出して寝てるし。私のいないところでは、猫語で会話しているらしいし。
なんだか寂しいぞ……。


ところで、私のインターネット上巡回コースに「双葉社Webマガジン」がある。いしいひさいち伊藤理佐のまんが(pdfファイル)がタダで読めるのだ。なんて素晴らしい……。特に、伊藤理佐「女いっぴき猫ふたり」は、猫飼の皆様にオススメです。
さて、そこで新たに発見したのが、「ガチ博士のヤンキーラボラトリー」(by真右衛門)である。早く書籍化されないかなあ、と心待ちにしている。
荒廃し切ったヤンキー高校にやって来たガチ博士が、科学を使って不良たちを更正させていくというストーリー。教師に関羽(化学)と張飛(生物)がいて、夏侯惇という無口な不良がいたりもする。

……お分かりでしょうが、ギャグまんがです。念のため。
ガチ博士はロボット工学が専門らしく、巨大ロボ作成計画に携わっていたり、生活用品や廃材で(顔だけ)美少女アンドロイドリカちゃんを作ったりしている。

リカちゃんの一番の友達は、構成人数二人のレディースを仕切る素子。宇宙を愛し、常に太陽を観測できるようサングラス常備の不良少女である。

ある日、仲良しのはずのリカちゃんが素子を無視するようになる。博士が調べてみると、「お友達回路」が故障しているせいだと判明。「ロボットに冷たくされるのがこんなに辛いなんて……」と寂しい素子。博士に修理を頼むも、「あるもの」が必要と言われ……さて、リカちゃんの「お友達回路」は無事に直るのだろうか?


これを読んで私は思った。
猫にもお友達回路はあるのだろうか。
もし修理が必要ならば、それに必要なのは何だろう?
猫は、私が台所で作業をしている時に限って、足下で腹を出したり、カウンターの上から寄って来たりと構ってもらいたがる。いつもは「後でね」と待たせているのを、昨日はすぐに手を洗って付き合うようにした。顎の下、背中、腹を撫でながら、「多分この辺りにお友達回路があるはず」と呟きつつ。

猫は満足気にゴロゴロ言った。多分「にんげんなんてチョロイ」と思っていたのだろう。