透明人間の納屋

透明人間の納屋 (ミステリーランド)

透明人間の納屋 (ミステリーランド)

もうこのシリーズを「児童文学」だとは思わぬことにしたので、気が楽になったような気がする「ミステリーランド」5冊目。
島田大先生による本作は、もういかにも島田荘司的な物語となっている。超自然、社会的な問題、そして現在の社会状況をも絡めて綴られるストーリー。もーてんこもりである。
まあ、「騙される」と思ってちょっと読んでみてください。多分騙されますから……。


物語は、主人公が過去を回想する形で進む。
ヨウイチは、日本海に面したF市に母と二人で住む小学生。父はいない。誰なのか、どこにいるのかも知らない。
母は夜から仕事に出掛ける。学校から帰ると、家には誰もいない。でも、ヨウイチは寂しくなかった。真鍋さんがいたからだ。真鍋さんは、ヨウイチの家の隣で印刷会社を経営しており、何かにつけヨウイチの面倒を見、夕食をともにし、そして様々なことを彼に教えてくれた。宇宙とは、地球とは、人間とは何か。「物事は見る角度を変えれば別の面が見えてくる。そして……たいていそっちが真実なんだ。」
ある年の夏休み、隣の市で一人の女性―真由美―が忽然と姿を消す。ホテル内の密室から、衣服や靴を置き去りに消えたのだ。ヨウイチは、彼女が時折真鍋さんのところを訪れているのを見ていた。
夢と理想を語り、いつでもヨウイチに親切だった真鍋さん。隣家に来る度にヨウイチを罵った真由美。そして、彼女に「あの女」と呼び捨てられていたヨウイチの母……奇妙にいびつな大人たちに囲まれ、ヨウイチの夏が過ぎていく。「何故ぼくにあんなひどいことができたのか。……真鍋さんに、ぼくは……二度と取り返せない罪を犯した。」


推理パートはいつもながら大仕掛ではあるが、多くの仮説を立て、それを一つ一つ潰していく描写は丁寧に作られている。しかし、子供の視点で語られる、夢か現か判別の付かない不可思議な出来事を連ねる手法は、実に卑怯。「ほほう、それならば犯人は……」とか考えてるのに、「夢かも」ってなんだよー。はっきりしろよ。
石塚桜子による表紙絵がコワイ。裏返してもコワくて難儀した。★★★☆☆