あかんべえ

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あかんべえ
宮部 みゆき
PHP研究所 2002-03-16
評価

孤宿の人 上 孤宿の人 下 日暮らし 上 日暮らし 下 あやし

by G-Tools , 2006/10/08

 宮部みゆきによる、いかにもミヤベ的時代小説。
 謎めいた設定で読者を引き付け、そのまま最後の大団円へと突き進むスタイルは確立されているが、終盤はややごたついた感を受けた。


<あらすじ>
 賄や(武家屋敷等専門の仕出屋)を独立して、料理屋「ふね屋」を開いた太一郎・多恵夫妻。しかし、越してきた途端に愛娘のおりんが病に倒れる。熱にうなされた夢の中で三途の川を訪れたおりんは、快癒の後に店に憑く幽霊―「お化けさん」たちを見る能力を見に付けてしまう。そして、店開きの初の宴席で、抜き身の刀を引っさげた幽霊―おどろ髪―が騒動を起こし、「ふね屋」は「幽霊料理屋」として名を知られるようになってしまう。これではまともな客はもう望めない……と悩む太一郎。苦悩する父のために、店のために、幽霊達との交流を通して、おりんは過去と現在とを結ぶある事件について調べ始めるのだった……。


 三十年前の大量殺人事件と、死に際の記憶をなくしてその地に留まる5人のお化けさんとおりんの友情。幽霊騒ぎで腕を発揮するどころではない父の店。慕っていた人にちらりと見える底知れぬ悪意。そして、垂涎するような料理の数々。様々なエピソードや、魅力的な登場人物、ミステリアスな設定の織り成すコントラストが鮮やかで、最後まで前のめりになって読み終えた。
 しかし、終盤の「解決篇」になると、突然息切れを感ずるようになる。それまでの主要登場人物が一堂に会して、過去と現在の問題を一挙に解決する。無論、それまでの積み重ねがあるので、内容は理解できる。だが、それまでのペースと比べると駆け足に過ぎるのである。ふうむ、ふうむ、ほほーう、と読んできたのが、ふむふむほうほうあっそうおしまい!という感じなのだ。(連作短編のようなスタイルだと、もっとすっきりしたのかもしれない。)
 全体としては面白かっただけに、そこがやや残念。★★★☆☆