赤ちゃんがすやすやネンネする魔法の習慣

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赤ちゃんがすやすやネンネする魔法の習慣
アネッテ・カスト・ツァーン ハルトムート・モルゲンロート 古川 まり
PHP研究所 2003-11-08

by G-Tools , 2006/10/12



予習シリーズ第二弾。ドイツの心理学士と小児科医の共著による、「親も子供も安眠できるための『トレーニング』の方法」を教授する書である。ロシアに続いて今度はドイツ。洋モノ好きです、ハイ。


 「眠らない」「夜泣きをする」子供は、ある意味高い学習能力を備えているといえる。「泣けば(あるいは何か特定の行動をすれば)親が構ってくれる」という経験を効果的に利用しているのだ。そのため、両親が子供に操作されずに、ある特定の生活パターンを採用すれば、今度は「こうしても構ってもらえない=無駄だからやめよう」となる可能性が高い。
 本書は「泣いても放置しましょう(その内泣き疲れて寝ます)」という「引き離し療法」を推奨するものではない。徹底放置すれば子供は強い孤独感を覚えるし、また泣き声を聞きつつも放置することは両親にとっても大きなストレスとなる。さらに、放置に耐えられずに構ってしまえば「長く泣くほど構ってもらえる」という学習をさせることになりかねない。


 本書が薦めるのは、時間帯を決めた「トレーニング計画」の実施である。一日の適切なタイムテーブル(月齢に応じて変化)を作成した上で、就寝時間を決定する。その時間になったら、目が覚めている状態の子供をベッドに入れ、親は部屋を出る。一人でベッドに入った子供が泣き始めても、計画に定められた時間(例:3分)は子供のそばに行ってはならない(感覚ではなく、きちんと時計を見て計測すること)。その時間が過ぎても子供が泣いている場合(本当に泣いている場合のみ)は、子供のそばに戻るが、子供がまだ目覚めている1-2分の内に部屋を出、なおかつ授乳や抱っこをしたり、おしゃぶりなどを与えてはならない。そして、再度定められた時間(例:5分)待機し、同じこと(待機時間は徐々に延ばす)を子供が寝付くまで繰り返す。その間、禁止事項を厳守すること。
 つまり、「一人で寝ても怖いことはない」「お父さん/お母さんはここにいるよ」「一人で寝ることを覚えてね」ということを伝え、学習させるためのトレーニングなのである。
 ただし、このトレーニングを実施できるのは6ヶ月以上の健康な子供に限られる。それ以下の月齢の子供に対しては、別の「慣らしトレーニング」を行う。また、生後3ヶ月以下の子供に関しては、泣くのが当然であり、これを矯正するのは不可能ではあるが、「慣らし」を行うことで夜に眠りやすい生活パターンを作ることはできる。また、子供が病気の場合には、このトレーニングは一切適用されない。
 夜泣きする子供と対峙する両親が良好な関係を維持するのは難しい。両親は睡眠不足になり、夫婦二人の時間を確保できず、また子供自身も連続する適切な睡眠時間を確保できないことで成長に問題を生じる可能性がある。このトレーニングによって適切な睡眠パターンを構築できれば、それは家族全体に平安をもたらすことであろう。ハレルヤ。


 というのが、本書の大まかな内容。この他にも、例外や個々の事例、子供の睡眠に関するデータなどについて細かく書かれている。細かすぎて「要点だけ知りたい」という時にはちょっとイライラするほどである。このような場合はこう、こんな場合はこう、そうでない時はこう……といった具合で、斜め読みでは中途半端なことになりかねない。実践するつもりなら、部分的に取り入れるのではなく、(条件に応じたプランを)完全に実行する必要がある。
 そこで問題になるのが、「家の大きさの違い」である。日本の一般的な家庭では、乳幼児専用の部屋を設けることは稀だ。大抵の場合、ベビーベッドや布団が両親の寝室に置かれたり、同じ寝具に添い寝したりする。(「川の字」ってやつですね。)だが、本書は「子供部屋」がある方が一般的なドイツで書かれている。「家が狭くてベビーベッドが夫婦の寝室に置いてあるとき」の対処法についても書かれてはいるが、あくまでも例外的な扱いである。うらやましいぞ、広い家。
 そのため、夫婦の寝室に置いたベビーベッドで本書のトレーニングを行うには、別室という条件を満たす家庭以上の忍耐力が要される。同じ部屋で眠っている時に子供が泣き始めたら、構いたくなるのが人情であろう。しかし、声を掛ける程度でとどめ、決して起き上がって抱き上げたり、授乳したりしてはならない。また、「おやすみ〜」と一人にしたら、その後自分たちが眠る時には細心の注意を払って静かに行動せねばならない。子供を一度寝かしつけたら、大人が邪魔をして起こすのは厳禁だからだ。子供が寝付いてから一定時間以上、両親は同じ部屋では就寝できないということでもある。親子同室の場合、「トレーニングを開始して数日は、両親が別室で就寝するも良かろう」とのことだが……ううーん、我が家ならどこに寝よう。台所?寝袋買おうかな。
 そんな訳で、日本で実践するならまず広い家に住むのが一番。狭い家でもできるが、ちょっとタイヘン。でも、数日のトレーニングで「親も子も安眠できる」のなら、試す価値はあるのかもしれない。