ドードー鳥の飼育
某氏オススメの薄井ゆうじを読んでみた。
これは中々味わい深い。飄々とした疎外感と、なぜかうらやましいような違和感に満ちた短編集である。
短編小説において私が最重要視するのは、「意表を突かれるオチ」である。ふーん、ふーん、ふーん……えええっ!というカタルシスを求めている。要は「小噺」好きなのだ。
その点、本作はその望みを果たすものではない。しかし、それを不満にも思わない。何故なら、冒頭から既に意表を突かれるためだ。絶滅した鳥の飼育係。ファミレスでサラダを取り分けてくれるフラミンゴ。手に入れられないありふれた食材。設定の勝利と言えよう。
ジャンルを指定するならば「不条理小説」に入れるべきものなのだろうが、それぞれの表現が何の暗喩であるかなどと考えさせるようなものではない。あえてカテゴライズするなら、「不思議小説」とでも名付けたい。読み始めれば後はただ、滑らかに始まった不自然さがどこに収まるかを楽しみにページを繰っていく。
のんびりできる時に、この不思議な世界をゆっくり楽しんでいただきたい。★★★☆☆