遺言状を書いてみる

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遺言状を書いてみる
木村 晋介
筑摩書房 2001-02
評価

40歳で遺言状を書く!

by G-Tools , 2006/10/12



 友人のblogに紹介されていた本を読んでみた。さしたる強い動機があった訳ではないのだが、amazonのレビューに「猫に遺産を残す方法が書いてある」とあったためである。もし私が何もメッセージを残さず逝ったとしても、家人はうららのためにできる限りのことをしてくれると知ってはいるが、私としては自分が彼女のことをどれほど大事に思っていたかを残したいのである。うらねこさんには知ったこっちゃないでしょうが。


 さて、本書は一種の実用書であるが、同時に読み物として非常に面白い作品となっている。ノゾキ趣味のある私には、他人の書く遺言状を読めるだけでも興味深い。特に、土屋賢二氏の(いつもどおりの)遺言状には抱腹絶倒し、画家にして都都逸作家の中道風迅洞氏の実用的な内容にいたく感心した。
 また、実用的側面としても、判例で無効とされた遺言状のどこに問題があったのか、また文言一つで財産を受け取る側の経費や手間が恐ろしく変わってくることなどを知ることができた。「相続させる」と「遺贈する」では、さあどっちがお得でしょう?などの知識については、へええと声を上げて頷くばかりである。全く、法律というのはややこしいものだ。本書を参考に遺言状を作成した上で、プロに添削を頼むのが最も安全な策だろう。


 (私にとっては)肝心の「猫に相続させる」件だが、法律上は猫自身に遺産を分けることはできないのだそうだ。そのため、遺言では猫を特定の人間に遺贈し、これに持参金をつける形を取るらしい。猫が確実にその人物に届くよう、第三者を遺言執行者とすればより確実である。そのための遺言状「ひな形」も掲載されている。
 遺言に書いて法的効力がある条項は限られているので、「毎日おいしいゴハンと新鮮な水を○回給餌すること。ねだられたら優しくお腹をなでること。」などと書いても実行される保証はない。猫よりも長生きしそうな、信頼できる人物に依頼する必要がある。猫だけを大事にする生活をしていては、自分亡き後の猫の生活を保障できない。猫(でも犬でもイグアナでも)を愛する人は、人付き合いも大切にしましょう。


 この他にも、散骨(散灰)などの葬儀方法や尊厳死に関する適切なアドバイス(関係機関連絡先一覧)などもあり、至れり尽くせりである。いざという時では遅過ぎるかもしれない。著者のように、毎年始に遺言状を書き直すのは中々いいアイデアだ。早速私も案を練ってみようかと思う。いや、財産なんてないんですけどね……年末ジャンボが当たるかもしれないし。★★★★☆