0〜4歳 わが子の発達に合わせた1日30分間「語りかけ」育児



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0~4歳 わが子の発達に合わせた1日30分間「語りかけ」育児
サリー ウォード Sally Ward 槙 朝子
小学館 2001-06

赤ちゃん語がわかる魔法の育児書 赤ちゃんとお手てで話そう  親子で楽しむベイビー・サイン かしこいママの育児の本―0歳から5歳まで、毎週の知育遊び260 じゃあじゃあびりびり シアーズ博士夫妻のベビーブック

by G-Tools , 2006/10/15



 なんちゅー長いタイトルだ。しかし、本書の内容はこの表題に全て内包されている。早期教育でも幼児教育でもなく、ただ「一日30分間連続して『語りかけ』をしよう」というものだ。それで目指すのは、「選択して聞く能力」の基礎を作ること。なんじゃそりゃ?と思い、読んでみた。なーるほど、これならできそうだし、やるだけのことはありそうだ。


 著者はイギリスの言語治療士で、聴覚学(オーディオロジー)を修め、20年以上も言語障害児の治療に携わってきた女性である。
 本書の構成は、「育児の百科」同様、成長段階に合わせて組み立てられている。該当する月齢に適したコミュニケーションの取り方や注意すべきことが章に分けて語られ、説明される。
 「9ヶ月から1歳まで」の章で、私の注意を引いた「選択的に聞く」ということについての説明があるので引用しよう。
 「選択的に聞く、とは周りの全ての音の中から、聞きたくない音は無視し、聞きたい音だけを選び出して注意を向ける力のことです。……これがうまくいかないこどもが増えています。……ここ15年ほどの間、社会が段々うるさくなってくるにつれて、この問題は大きくなってきています。」
 この能力が適切に醸成されないと、音を聞き分けたり、その音の意味することを推測することに遅れや障害が生じる可能性がある。これを避けるためには、新生児の頃から、静かな環境で、一人の大人の話しかけに耳を澄まし、ことばをはっきり聞く機会が多くあるほどよいのだ。赤ん坊がある音に集中するためには、大人と異なり「聞こうとする音」と「それ以外(背景の音)」の間に、かなりの音量の差が必要とされるためだ。テレビやビデオは複雑な音と(最も注意を引きやすい)光が多すぎるため、かなりの長期間薦められない。
 語りかける内容は、何も難しいものではない。「論語」を読んでやる必要もないし、中途半端に外国語を聞かせるのも害になるだけだ。最初の頃は、赤ん坊が発する「音」を真似したり(赤ん坊「うー」大人「うーうー」など)、ごく短い表現で触っているものの名前を言ったり、していることの実況中継(「おむつですよー」「足、足の裏」「おなか、おへそ」「ボール、ころころ」)をしたりすればよい。
 成長に応じて若干の違いはあるが、いずれにせよ大事なのは、何か特定の反応を引き出そうとしてはいけないということだ。注意を集中させようと強制してはいけない。言葉を話し始める(とされる)時期に、無理に喋らせようとしてもいけない。大人の発音を真似させようとするのも厳禁だ。反応があれば、それを会話の合いの手のようにして、大人が一方的に演説しないようにすることも重要だ。


 英才教育に興味はない。てゆーか、私には人に指導できるほどの学力がない。だが、できることならば「よく見、よく聞き、適切に話せる」人間にはなってほしい。この本がその手助けになってくれれば、と願うものである。