クリスマス・プレゼント



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クリスマス・プレゼント
ジェフリー ディーヴァー Jeffery Deaver 池田 真紀子
文藝春秋 2005-12
評価

by G-Tools , 2006/10/17



 私はジェフリー・ディーヴァーが好きだ。何故ならば、彼は読者への「サービス」をただひたすら考えてくれる小説家だからだ。ここまで献身的に「何とかしてひねろう、どんでん返しでアッと言わせよう」としてくれる方は中々いませんよ。★★★★☆


 「ボーン・コレクター」等のリンカーン・ライムシリーズで知られる作者による、初の短編小説集。上述の通り、最後の最後まで油断できない作風が特徴の作者が、それを一層際立たせる16本のミステリをまとめたものだ。原題はその名も「TWISTED(ひねった)」。日本版タイトルは、本作中唯一の書下ろしであり、リンカーン・ライムの登場作から取られている。発売日の去年12月に合わせたものだろう。
 ある意味、私を始めとして以前からのディーヴァーファンは不幸である。作者が「まえがき」で伝える通り、「世の中のものごとは、すべてが見た目どおりであるとはかぎらない」ということを既に知らされているからだ……他ならぬ、ディーヴァー自身によって。本書によって初めて彼の「裏切り」に出会う読者がちょっと羨ましい。


 本作中で私が好きなもののタイトルを挙げたいのだが、そうすると「ほほう、するとそれには『こうなる』という予想に違う強烈なオチがあるのだな」と推理されてしまうだろう。それでなくても、読んでいる最中に「実はこうなるんだろうなあ♪」などと予測したり、それをはるかに超えるオチに驚嘆したりおののいたりしてしまうのだから。
 ミステリ短編集が大好きな私であるが、今までに読んだ短編集の中でも5本の指に入るほどの完成度である。先日絶賛した「クライム・マシン」を凌ぎ、我が愛する「おかしなことを聞くね」に迫る勢いだ。
 唯一欠点を挙げるなら……のめり込んで読んでいる内に、次々登場する「驚異のどんでん返し」に慣れてしまうところだろうか。贅沢な悩みである。