2/18〜2/20 陣痛記



 16日(木)に入院し、17日(金)に退院したのは、先日書いた通り。
 だが、陣痛自体はその後も毎日夕方に規則正しく10分おきとなり、夜に5分おきとなって「発生」していた。朝になると和らぎ、午前中には雲散霧消してしまうのも同様である。消えてしまうと言っても、幾晩も続くときついのなんの。しかし、5分間隔の痛みがいかにしんどかろうと、数時間で消えてしまう程度の陣痛では出産できない。病院に行って再度空振りするのはイヤなので、私はただひたすら自宅でうーうー唸りつつ耐えていた。


 だが、それを聞くだけしかできない家人のストレスは相当なものだったらしい。
「うーうー」
「大丈夫?病院行ったほうがいいんじゃない?」
「うーうー、まだまだ」
「辛いんでしょ?行ったほうがいいよ」
「うーうー、朝になっても痛かったら行くー」
 これが金土日と続いた。日曜日の深夜、痛みが最高潮になった。布団にしがみついて痛さに耐えていたが、余りに辛くて涙が出て来た。みんな、こんな大変な思いをしているんだ。私だってガマンしなくちゃ。そう思っても、痛みが消えるわけではない。しくしくめそめそしていると、様子を見に来た家人が言った。
「病院行くよ。車出してくるからね」
 日付が変わり、20日(月)深夜1時頃の再入院だった。
 そして、その明け方に(ようやく)破水。これでやっとマトモな陣痛が始まって、この苦しみも終わるんだ!と思いきや……そうはいかないのであった。


 朝になり、陣痛は再度消えてしまったのだ。こうなると新たな問題が生じてくる。
 破水とは、胎児を包んでいる膜(卵膜)が破れて、羊水が子宮から流れ出ることを言う。通常は陣痛が既に始まっており、子宮口が大きく(8cm程度以上)開き、もうすぐお産!という時期に破水するのだが、早い時期に破水し(これを前期破水と言う)、その後有効な陣痛が来ない状態が続くと徐々に子宮内に細菌が入ってきてしまう。これは当然、胎児にとって危険な状態になる。そのため、破水後に状況が進行しない場合には、陣痛促進剤(子宮収縮剤)を使用して分娩を促進することがある。促進剤にはリスクもあり、病院からは「促進剤使用の許可書」提出を求められていた。まさかそれを本当に使うことになるとは……。
 午前中一杯様子を見たものの、やはり陣痛は自然に再開しない。そのため、午後3時にとうとう促進剤の点滴が始まった。徐々に量を増やしていくと、今まで以上に強い痛みが2-3分おきに現れてくる。夕方5時過ぎにはベッドの脇に付いた柵にしがみつき、呼吸法でどうにか痛みを逃す努力をしていた。「ふーー、ふーー」という呼吸が、時折痛さの余り「くぅぅぅー、うぅぅぅー」という唸りになってしまう。これは必要な痛みなのだ、耐えるだけの価値があるものなのだ、と自分を鼓舞してガマンしていたのだが……なんと、薬が切れると同時に、再度再度陣痛は消えてしまった
 破水してしまったので、もう退院はできない。同じ理由で、陣痛室という寂しい場所から出ることもできない。後から入院した妊婦さんに、どんどん追い抜かされていく。担当の助産師さんはどんどん交代していく。体力ばかりか、精神的にも疲労が溜まってくる。これ、いつまで続くの……?


 こうして、二度目の入院は二日目に入っていった。