新クラブ発足のお知らせ



1.クラブ名称
 「授乳部


2.組織構成
 授乳部長 1名
 哺乳部員 1名
 ※現在、部員の追加募集は行っておりません。


3.活動日・活動時間
 毎日・随時


4.活動内容
 授乳及び哺乳、オムツ替え。


5.部長から一言
 我が部は大変キビシイ体育会系のクラブです。活動中に罵られることに耐えられない方にはオススメできません。(例:「まだまだ赤ん坊だな」、「ケツの青い奴め」、「このベビーフェイスが!」)
 コーチ常時募集中。

 

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 そんな訳で、日々部活動に勤しむ授乳部長(=わたし)である。
 この部活動は時間を選ばず行われるので、突然深夜に開始されることも珍しくない。
 草木も眠る丑三つ時、夜陰を裂いて響く哺乳部員(=かん子)の掛け声で目が覚める。眠い目を無理矢理こじ開けて、オムツ替えの後、授乳活動を開始する。しかし、最近哺乳部員はこのキビシイ活動に少し嫌気が差しているようだ。授乳の時だけ、ひときわ激しく泣くことがあるのである。これが部長にとって非常なストレスとなっている。アイデンティティの問題にもかかわる大事なのだ。真剣に取り組まねばならぬ。
 わああーん、と泣きながら暴れる赤ん坊をあやしながら寝室で授乳していると、別室で寝ている家人がやって来て言う。
「夜は泣かせない方がいいよ(母乳に固執せず、ミルクを与えれば良いという意味)。ご近所に迷惑だから」
 正論である。集合住宅に住む者は、常に騒音に対する配慮を忘れてはならない。常識と言ってもよい。しかし、今胸に抱いた赤ん坊に絶叫されている母親としては、正論を説かれてもただヘコムだけである。
 部活動の厳しさを今日も実感する部長であった。


 母乳だけでは足りないので、授乳活動はミルクを飲ませて終了となる。背中をポンポンしてゲップをさせ、眠り始めたのを確認したら、忍び足で寝室を出る。
 台所で哺乳瓶を洗っていると、居間のカーテンの隙間から猫の尾が見える。手を拭いてその隣に行き、外を見る。絞り切ったレモンのような月がおぼろに浮かぶ夜の中、二、三の窓に明かりが見える。あの窓の内のどれかでも、授乳部の活動が行われているのかもしれない。一人ではないのだと思うと、少し気が楽になる。
 猫が私を見上げて、にゃあと鳴いた。そうだね、お前もいるしね。