とりぱん


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とりぱん 1 (1)
とりの なん子
講談社 2006-03-23

by G-Tools , 2006/10/17


 どんな内容かは、上の写真のオビにあるコピーをお読みいただければいいかと思う。
 私は除き趣味横溢な性格なので、「“日常”の全てをネタに綴る」エッセイなどに弱い。湿っぽく、自意識過剰な私小説には興味はないが、自らを少しシニカルに省みるようなもの、私の知らぬ世界を垣間見させてくれるものなどは大好きである。
 この作品は、そんな私のノゾキ好奇心を満足させてくれること甚だしく、今の私はどこか北の方にバードウォッチングに行ったり、せんべいの「耳」や、「まめしとぎ」、「がんづき」などを食べてみたい気持ちでいっぱいである。単にオヤツが食べたいだけかもしれんが。


 本作でデビューの新人とのことで、荒削りだったり未熟だったりする部分は多い。オチを付けかねて、アンバランスに感傷的な言葉で締めたり、読ませる順序が一定でなかったりするのだ。文章は所々で違和感を覚えるし、絵も、手放しで「ウマイ!」とは言いかねる。内容も、身近な所から離れることはないので、どうしてもワンパターンに陥りがちだ。
 しかし、登場する動物や人物の豊かな表情や仕草は実に素晴らしい。がんばるスズメや、荒々しいヒヨドリ、マイペースなアオゲラの姿を是非見て欲しい。率直に言って、この作者に他の作品(フィクションなど)が作れるのかどうかは分からないが、本作だけでも充分価値はある。★★★★☆