人生を救え!



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人生を救え!
町田 康 いしい しんじ
角川書店 2006-03
評価

権現の踊り子 実録・外道の条件 人生を歩け! 耳そぎ饅頭 土間の四十八滝

by G-Tools , 2006/10/19



 未だに町田康の小説を読んでいないというのに、今度は人生相談だの対談だのを読んでしまっただんだだん。
 毎日新聞の日曜版に連載された人生相談「どうにかなる人生」と「麦ふみクーツェ」のいしいしんじとともに東京を歩きつつ語り合う対談集「苦悩の珍道中」の二部構成。


 まったく、この人に人生相談なんてやらせようと思いついたのはどこのどなたであろうか。まったくもって正気ではない。だが、このキチガイ加減が実に面白いものを作り出している。
 人生相談に見る「悩み事」というのは、被害者の激白であるように見えて、実はその人の偽善や異常を告白させるようなシステムなのかもしれない。夫が自分に無関心だと嘆く妻、自分たちは優秀だったのに娘は勉強ができないと憤る両親、どうしたら他人に嫌われずにいられるかしらと悩む若い娘、嫁に追い出されたと主張する姑、50歳なのに気分は20歳でキムタクに恋するお母さん、美人なのに振られるのは何故?と悩む女性……これらの相談に対して、町田先生は実に町田先生的な回答を返している。「それは回答になってないだろう」というようなものも多いのだが、中には背筋が寒くなるような鋭い考察もあったりして侮れない。
 特に、「よく『かわいいね』と言われていましたが、実はそれは嫌味だったようです。周囲に嫌われぬよう、雰囲気を読み、理解できるようになるためにはどうすればいいでしょう?」と相談する若い女性に対する答えがふるっている。
 「あなたにとって他人というものは自分に対する評価の基準でしかないということになってしまうんだな。相手にだって心があるんだぜ。それをメジャー扱いしたんじゃそりゃ嫌われるさ。」
 ステキすぎる。


 いしいしんじとの対談では、大阪出身同年代の二人が語る東京と社会の姿が興味深い。そんな対談集だけを継続した続編が出ていた。読んでみようっと。