読書記録(2006年1〜5月)
読書感想文がどーにも書けないので、月ごとに〆てまとめることにしました。今までに書いたものもあるけれど、覚書としてとりあえず全部アップ。
1月
玉石混交。何で選ばれたんだ?と悩むものもあるが、興味深いアイデアがスッキリと肉付けされた作品もあった結果の★三つ。レオナルド・ダ・ヴィンチが探偵役となる「二つの鍵」(三雲岳斗)が面白かった。
2月
「はてしない物語」のスピンアウト作品。期待していただけにがっかりの★二つ。「元の設定」を活かそうとしているようだが、空回り気味。魅力的な登場人物がいない。幾人かの登場人物を必要以上に蔑視しているかのような描写が気に障る。文章の流れがスムーズでないのに、場面は目まぐるしく変わる。設定や小道具が整っており、文章が映像的なので、RPGなどに仕立てたらけっこう面白いかもしれない。
中年男専用のファンタジー。ちょい悪な過去と、影のある女と、酒と煙草と復讐と友情てんこ盛り。こういうの苦手だ。
「モンク」の脚本家による、ミステリ・クイズ。謎解きは簡単だが、トリックは強引。「モンク」の魅力は登場人物に負うところが大きいのだな、と改めて感じた。
「池袋ウェストゲートパーク」の作者による、金融サスペンス。ドラマ化もされた、らしい。株の話は正直分からんが、ピカレスク小説の一種としてはけっこう面白い。
3月
- 魔法使いハウルと火の悪魔―ハウルの動く城〈1〉
- ダイアナ・ウィン ジョーンズ Diana Wynne Jones 西村 醇子
- 徳間書店 1997-05
- 評価
by G-Tools , 2006/10/19
宮崎駿の映画で欠けている所(説明不足)は補われるが、登場人物の魅力は映画が勝る。しかし、基本的には別の話。ハウルの正体などのアイデアが面白い。
ある作家の記念館で起こる幾つかの小さな事件と、ある殺人事件を巡るミステリ。登場人物に魅力が少なく、事件は動機と説得力に欠ける。唯一、主人公の夕食に出るコロッケが魅力的。残念ながら、今までに読んだ若竹七海の小説の中で最も評価が低くなってしまった。
4月
ドン・ウィンズロウのニール・ケアリー・シリーズ第四弾。ある大企業に絡むセクハラ事件を巡り、ニールは証言者の「教育」を任される。奇妙な「マイ・フェア・レディ」的状況に、殺し屋や探偵、マフィアが入り乱れての追いかけっこ。いつもながら登場人物が魅力的で、いつもよりストーリーはコミカル。著者のファンには馴染み深い、ある人物も登場する。後書きによれば、本作はシリーズの実質的最終作らしい。
5月
直木賞受賞作。倒叙で語るミステリ。ぐいぐい読ませるストーリーと、齟齬のように見えた細部を全てはめ込むパズルのようなトリックに感嘆。なんとかして「刑事コロンボ」で作ってもらえんでしょうかねえ?
「外見が全て」の現代を評するエッセイ。興味深い記述も散見されるものの、全体的には偏見と視野の狭さを感じる仕上がり。筆者の劣等感と自負心が作り上げるものは、退屈ではないが、時にエグ味が強過ぎる。
産まないことを選択した女性による、「で、少子化って何が問題なの?どうすれば解決するの?」を扱うエッセイ。少子化を扱う内に、作者と同世代の女性に対する考察ばかりが深くなっていく様子が面白い。
ヘンタイ精神科医と、彼の元を訪れる人々の奇妙な「病気」をコミカルに描く短編集。笑って読む内に、何故か怖くなり、読み終えたら暗い気分になった。なんでだろ?
トリノの聖骸布に付着している「キリストの血」からクローン人間が作られたら?という発想の小説。主な舞台は近未来のアメリカだが、作者はフランス人。翻訳のせいか、フランス的なためか、読みにくい長文に閉口した。アメリカの「正義」や文化を揶揄する部分が多いのもフランス的か。大掛かりなストーリーの割に、カタルシスは充分には満たされず終わる。
存在すらも定かではない謎の古書の探索と、製作者不明の不思議なコンピュータ・ゲームの進行が絡み合いながら進むミステリ。魅力的な素材を叩き上げて作った小説ではあるのだが……残念ながら★三つ止まり。すっごく面白かったのは確かなのだが、終盤から主人公の心理と行動に共感できなくなってしまったのが残念。素材の一つ「タイムリミット」を、途中で放棄してしまっているのももったいない。
元政治家の事務所に持ち込まれる厄介事に対応する学生アルバイトが主人公の、軽いタッチのミステリ。政治にまつわるエピソードは興味深いが、説明部分がやたらに多くてくどい(連載小説だったせいもあるだろうが)。キャラクタはステレオタイプ、事件と謎解きは退屈、それでも最後まで読めるのだから、作者の筆力はそれなりあると言えるだろう。実質★2.5。