コーデックス



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コーデックス
レヴ グロスマン Lev Grossman 三川 基好
ソニーマガジンズ 2006-03

by G-Tools , 2006/10/19



 先日「読書感想文のまとめ」の中で、「コーデックス」を「残念ながら★三つ止まり」と評した。しかし、読み終えて2週間ほどたった今、この本のことばかり考えてしまうのだ。


 特に気になるのが、作中で「幻の奇書」として登場する「キムメリア人の国への航海」という小説だ。古書を装い、近世に作成された偽書とされるこの物語が思い出されてならないのだ。
 中世英文学を研究するある女性によって語られるその内容は、鹿の頭を持つ騎士に誘われ(ここでは「さそわれ」ではなく」「いざなわれ」と読む)、果てしない旅に出るある男の放浪記だ。死と殺戮、ゆがむ時間と、限りなく広がる空間、そして太陽が遠ざかった世界の果て。これらの要素が、平行して語られるあるコンピュータ・ゲームの内容と奇妙な一致を見せつつ物語は進む。
 また、古書に関するうんちくも豊富で、そういった部分を読むだけでも興味深い。羊皮紙とか細密画とかいう言葉に萌える書痴の諸氏には特にオススメ。
 てな訳で、頭の中で熟成が進んで、もー「コーデックス」の記憶だけで1時間ぐらいぼけっとできるほどである。えーい、もう図書館に返しちゃったから、細かいところが思い出せない!買うぞ!また読むぞ!
 勢い余って★★★★☆!(「でもやっぱり……」という部分があるのも確かなので、満点にはできない。)