猫の心を持つ男

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猫の心を持つ男
マイクル・アレン ディモック Michael Allen Dymmoch 堀内 静子
早川書房 1995-02
評価

by G-Tools , 2007/01/13

【商品の説明 内容(「BOOK」データベースより)】
精神科医ケイレブの患者が謎の死を遂げた。警察は自殺と発表するが、そんなはずはないと直観した彼は、独自に調査をはじめる。一方、捜査にあたったシネス刑事はじつはケイレブに殺人の容疑をかけていた。人間を犬型と猫型に分類し、超然と生きる精神科医と、たたき上げの実直な刑事。ふたりはいつしか立場を超えて理解しあうが、時すでに遅く、第二の殺人が…マリス・ドメスティック・コンテスト最優秀作に輝く話題作。

という紹介だが、私にはピンと来なかった。
まず、主人公二人(ケイレブとシネス)の人物造形が整っていない。シネスの行動は素っ気なく描かれ、その動機や心情を理解・納得できない場面が多い。ケイレブにはミステリアスな行動が多く、それが何を意味するのかが分からぬまま話が終わってしまう。(読了後に、本作が長く続いているシリーズの最初の一冊だと知って納得。でも、処女作なのにそれでいいのか?)
また、文章が実に読みにくい。ああした。こうした。こうなった。……というような、短いセンテンスを畳み掛けるように用いるスタイルが、翻訳と愛称が悪いせいかもしれない。なんか、不自然にハードボイルド調。パスティーシュやパロディと言われてもおかしくないほど「男性的」印象を受けるのは、作者が女性だということに起因しているのだろうか。
それとも、翻訳者が未熟なのか?と思い、キャリアを調べたら、逆に恐ろしく多作(多訳?)であることが分かった。忙しすぎてやっつけ仕事になったのか?とまで妄想してしまった。さすがにコレは言いがかりである。
紹介文にある、猫型人間に関する考察には、別に新奇なものはない。作者が猫好きなのはよく分かったが。タイトル(原題は「THE MAN WHO UNDERSTOOD CATS」)に惹きつけられて読んだので、予告編だけ出来の良い映画を見たような気分である。
マリス・ドメスティック・コンテスト最優秀作には、私の好きな「フェニモア先生墓を掘る」もあるのだが、これに関しては審査員と好みが合わなかったようだ。以降5作に渡って継続されているこのシリーズが翻訳されていないところを見ると、私以外の日本人にも好みじゃなかったみたいだな。