人類の子供たち

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人類の子供たち
P.D. ジェイムズ P.D. James 青木 久恵
早川書房 1999-07
評価

by G-Tools , 2007/02/03

【商品の説明・内容(「BOOK」データベースより)】
2021年、全世界でなぜか子供が生まれなくなって四半世紀が過ぎた。出生率が低下していっても、自分の子供はおろか、文明を受け継ぐ人類の子孫さえ得られなくなるとは、当初は誰も予想だにしていなかった。だがいまや、どんなに素晴らしい文化遺産を残そうと、数十年後にはそれを見る人間は一人としていなくなるのだ…。それが明らかになったとき、社会はどうなるか?絶望と無気力が、世界中を覆った。イギリスでは国守ザンが絶対的な権力を握り、できるだけ最後まで国民の生活水準を維持すると約束していたが、老人の自殺があいつぎ、出産を夢見る女性は想像妊娠をした。ザンのいとこで大学教授のセオは、ある日ジュリアンという若い女性と知りあい、惹かれるものを覚えた。だが、彼女は反体制組織のリーダーの妻だった。組織のメンバーから、セオはザンの執政の恐ろしい裏側を知らされる。組織がザンに目をつけられ、ジュリアンが助けを求めてきたとき、セオは思いがけない逃亡生活に巻き込まれていった。イギリスのミステリ界の実力派が新境地を拓いた、話題の近未来サスペンス。

ひとさまの書いた粗筋に文句をつけるのは品がないが、やはり「近未来サスペンス」という表現は適当でないように思える。ハヤカワミステリから出てるから、SFとは言えないのかもしれないが、少なくともサスペンスではなかろうに。
映画「トゥモロー・ワールド」(未見・てゆーか存在そのものを最近まで知らなかった)の原作。映画公開に合わせて、新しく同名の文庫が出ているが、内容はこれと(たぶん)一緒。(解説が違うらしいが。)

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トゥモロー・ワールド
P.D. ジェイムズ P.D. James 青木 久惠
早川書房 2006-10

by G-Tools , 2007/02/03



上記粗筋を読んで興味を持ったのだが、実際に読んでみると、粗筋の方が面白く感じられた。何せ、物語の半分以上の長さを占める第一章「オメガ」では、50歳の大学教授の暗ーく内省的な独白だの、行動の描写だのが淡々と続くのである。そして、「子供が生まれない世界」の陰々滅滅たる様子たるや、少子化恐怖症に陥りそうな迫力である。これだったら、「子供しかいない」トウモロコシ畑に行く方がまだマシと思えるほどだ。
また、完全に無味乾燥ではない、というのがまたじれったいのである。盛り上がりそうなエピソード登場!?→この程度で終いか……が積み重なり、徐々に刺激を求めすぎる自分の浅ましさが嫌になってしまった。
しかし、第二章「アルファ」に入るや、物語は突然アクション映画の様相を呈するようになる。中々の迫力と、ドラマチックな展開が待ち構えていたのである。映画製作者は、きっとこのパートに惹かれたのだろう。(複雑な心理と不吉な予感を静かに描くエンディングも秀逸。)
しかし、総合すると感想は★三つ止まり。色々考えさせられる作品ではあるが、娯楽を求める身とは相性が悪かったらしい。
ちなみに、映画のストーリーはまるで別物とのこと。
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トゥモロー・ワールド プレミアム・エディション
クライヴ・オーウェン P.D.ジェイムズ アルフォンソ・キュアロン
ポニーキャニオン 2007-03-21
おすすめ平均 star
star私も凄い映画だと思った。
star評価高いんですね
star2006年SF映画ベストワン
star裸足で走れば怪我する
star傑作です!

by G-Tools , 2007/02/04