パンプルムース氏のおすすめ料理

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パンプルムース氏のおすすめ料理
マイケル ボンド Michael Bond 木村 博江
東京創元社 2001-07
評価

by G-Tools , 2007/02/11

【商品の説明・内容紹介】
グルメ・ガイドブックの覆面調査員パンプルムース氏は、元パリ警視庁刑事。味にうるさい愛犬ポムフリットは、元警察犬。とあるホテル・レストランの味をチェックに訪れた珍コンビに出された皿には首が! 命と貞操まで狙われながらパ氏が挑む怪事件。『くまのパディントン』の作者が、大人たちに贈る超傑作グルメ・ミステリ!

くまのパディントン」は、私が子供の頃大好きだったシリーズだ。(1〜3までが家にあった。)「暗黒の地ペルー」から単身密航してきた、礼儀正しくもトラブルメーカーの若い熊と、彼のホストファミリーとなるブラウン一家を巡る物語である。手品を披露する話と、高級レストランに行く話、舞台を見に行く話が特に思い出深い。

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くまのパディントン ~パディントンの本(1)~
マイケル ボンド ペギー フォートナム 松岡 享子
福音館書店 2002-06-14

パディントンのクリスマス―パディントンの本〈2〉 パディントンの一周年記念―パディントンの本〈3〉 パディントンフランスへ―パディントンの本〈4〉 パディントンとテレビ パディントンの煙突掃除

by G-Tools , 2007/02/11

そんな訳で、パディントンの作者がミステリを書いていると知って、読んでみたのだが……はあ、読まなきゃ良かった。


まず、主人公パンプルムース氏(仏語でグレープフルーツの意とのこと)にまるで魅力がない。次から次へと災難が降りかかるのだが、最初のものを除いてほぼ全てが自業自得。解決できるポイントで不要な嘘をついたり、無駄な工作をしたりして、益々深みにはまるのだから同情できない。
ブラッドハウンドのポムフリット(フライドポテト)は悪くないキャラクタなのだが、(パディントンと違って)ごく普通の犬なので、犬である以上の活躍はしようがない。
また、ストーリーもミステリとしては及第点を付けられない。だって、208ページで終わる小説の、192ページまで真相がさっぱり分からないのだ。しかも、分かった後でもさっぱり納得できないというオマケ付である。
それだけでなく、どんなカテゴリでも評価し得ない。あえて言うなら「艶笑譚」だが、くどい上に大いに現実味に欠けて、私としては白けるばかりだった。空気で膨らませる人形がやたら出てくるので、そーゆーのが好きな方はどうぞ。
解説の村上貴史氏は、「すみずみまでユーモラスで気配りの行き届いた」本作の売れ行きが芳しくない(ハードカバー刊行時)理由を、「お色気コメディ」や犬、舞台がフランスだという点が流行に乗れなかったためではないかと分析している。色気に興味のない人間は稀だ。犬好きは恐ろしく多い。フランスが不人気だったことは少ない。質が高ければ、ナニを扱おうが、どんな動物がどこで何をしようが、気にする人などいない。本当に残念だけど、面白くないんだよ。
作者はフランス好きのイギリス人だというけれど、本当だろうか?色気と食い気とヒステリーのフランス人、という造形をすることで、遠まわしにフランスを馬鹿にしてやないかね?と、そこまで勘ぐるのは行き過ぎかも知れない。でも、率直な感想の一つでもある。