ショウほど素敵な犯罪はない
私は短編小説が好きだ。中でも、一定のテーマに則り様々な作家の短編を集めたもの―アンソロジーが特に好きだ。本作の前書きを引こう。
アンソロジーという言葉はふたつのギリシャ語、anthos(花)とlegein(集める)から作られた。文字どおり、花束のことである。
実にすばらしい。寄せ集め短編集を最初にアンソロジーと呼んだどなたかに幸いあれ。
しかし、花束のデザインはそれをまとめる花屋さんにかかっている。本作に収められた15種類の花に、私好みのものは少なかった。編者メアリ・ヒギンズ・クラークとの相性が今一つなのかもしれない。それでも(恋に落ちるような短編にはめぐり合えなかったものの)、以下二篇は中々印象深かった。
- 「ニューヨーク、ニューヨーク」(トマス・アドコック)
都会の喧騒と熱気の中で語られる、静かな絶望と倦怠の物語。ストーリーに目新しさはないが、雰囲気がとても巧みに表現されている。
- 「土曜の影」(ウィリアム・F・ノーラン)
狂気を狂気の中に描いて、実に恐ろしい作品。印象深くはあるのだが、実は早く忘れたくもある。