崖の家

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崖の家
トム サヴェージ Tom Savage 奥村 章子
ミステリアスプレス 1996-04
評価

by G-Tools , 2007/08/18

内容(「BOOK」データベースより)
カリブ海に浮かぶセント・トマス島。海を望む崖の上に、アダムとケイの夫妻とその娘が平穏に暮らす家があった。だが娘の世話係として謎めいた女性ダイアナが来た時から、不可解な事件が…次々と生まれる謎、予測のつかない展開。ロバート・B・パーカーローレンス・ブロック、ジョナサン・ケラーマン、ウェストレイクらが絶賛したサスペンス小説の傑作。

「誰それが絶賛!」というアオリ文句は、あんまり真に受けない方がいいのかなー。いや、面白いし、技巧的だし、ストーリーはやや感動的ですらあるんだけど……絶賛するほどかというと、そうではない。残念ながら。思わせぶりなところ(誰のものか分からないモノローグや、名前を明かさないまま動き続ける登場人物など)が不必要なほど多過ぎるために、ミステリを読み慣れた人には、想像の余地がありすぎて話が実際以上にややこしく感じられるのではないだろうか。他にも、最後まで読み終えてみると、動機や理由がさっぱり飲み込めない行動があったり、結局これって誰のモノローグだったの?何でこうなってたの?などと納得できない部分が多いのである。
それでも、ギリシャ悲劇の非常に技巧的な用い方や、次々に読者の予想を裏切る展開は中々のもので、不満と相殺して充分な★3つである。
ちなみに、舞台となっているセント・トマス島は作者の生まれ故郷だそうな。風光明媚に描かれる島の様子は実に魅力的。