一歳半を過ぎて

nekonomimi2007-09-27

かん子さんは、8月で一歳半になった。とてもありがたいことに、ぐんぐん健やかに成長している。
半年前のよたよた歩きがよちよちになり、今ではとことこ程度まで安定した。時折意外なスピードで走り出したりして、肝が冷える。用心のため、外を歩かせる時は、リュックサックにリードのような紐が付いたものを背負わせている。通りすがりの人に「犬みたいでかわいそう」と言われたことがあるが、気にしない。私はちょっと背が高い。ずっとかがんで手を繋いでいたら、私の腰が痛くなるし、かん子さんの腕だって疲れる。リードを短く手に巻いて、その状態で手を繋ぐ。時々放せる。急に走り出したら止められるし、安全な状況なら好きに歩かせることができる。実に助かる。


9月の初旬に、区の一歳半検診を受けてきた。
     出生時    六ヶ月      一歳      一歳半
体重  3.18kg  →  7.425kg  →  10.04kg  →  11.8kg
身長  51.4cm →  69.2cm  →  76.6cm  →  84.9cm
カウプ指数 16.4(現時点での標準15〜17)


見事な成長ぶりである。問診の医師によれば、平均内の最大数値をバランスよく推移しているとのこと。服がどんどん縮むわけだ。去年の冬服はもう着れまい。物入りである。
かんけーないが、問診のお医者さんが三国連太郎みたいな顔した年配の女性で、ややアンニュイなべらんめい調で喋る、中々雰囲気のある方だった。湯呑でお茶を飲まれていたが、場所が場所でなかったら日本酒などが似合いそうである。


さて、検診会場には1歳半の子供たちがぞろぞろいた。保育園には、かん子さんより半年以上年上の子供しかいないので、一度に同程度の年齢の子供たちを見る機会は稀である。走り回る子、泣き叫ぶ子、はしゃぐ子、むずかる子、スリングで抱っこされておとなしい子、かなりはっきりとおしゃべりする子……実に様々。
これはささやかな自慢なのだが、歯科検診でも、身体測定でも、最後の問診でも、かん子さんは一度も泣かなかった。大人しく待機し、順番が来たらあーんと口を開けたり、静かに秤のカゴに入ったり、医師が体を触るに任せたりしていた。どこに行っても「落ち着いてる」と褒められ、最後には笑顔でバイバイをして出て行った。実にイイコである。大人にとって都合のよろしい子、という意味でもあるが(実際、とても助かる)、大胆で気さくな性格は別にそう躾けたものではないので、生まれつき良い子だということなのだろう。親バカは充分承知だが、こういうところを見るとそう思ってしまうものなのだ。


とは言っても、身体の成長と共に発達しつつある自我の目覚めは、わがままや強情といった形でも現れている。「や!(いやだ)」という機会も増え、私は「イヤダもイカダもないの」としょっちゅうくだらないことを言ってしまう。覚えたらまずいな。何かもっとカッコイイ切り返しを考案せねば。

嫌なこと(したくないことをさせられる・欲しいものを入手できない)があると、嘘泣きでアピールしたり、真っ赤になって本気で泣き喚いたりする。「お母さんのバカー」と言いたげに、私のことをバチバチ叩くこともある。叱っても聞かない。「そういう子はゴハン抜きです!もう寝なさい!」というのを一度やってみたのだが、ベッドの中で悲しげに泣く様子に、私がいたたまれなくなってすぐに挫折してしまった。ゴハンをやったら、満面の笑みで「おいしいね〜」と言うような仕草で完食した。本気で長く叱るというのは、案外難しいものである。躾はおいおい考えよう。
様々なことを自分でやると主張して聞かず、当然のようにうまく行かない。時々そんなことでもかんしゃくを起こす。ズボンを履こうとすれば、片方の側に両足が入ってしまってムキーッ。重たいものを持ち上げようとして、取り落としてウワーン。しかし、それでもへこたれずに何度でも挑戦する。最近は3回に1回くらいはズボンを両足に分けて履けるようになった。おなかの方まで引っ張りあげることもできる。残念ながら、お尻の方までは行き届かず丸出しのままだが。


「こえ(これ)」「おじっち(おじいちゃん)」「おばち(おばあちゃん)」「ぶっぶ(車)」「わんわん(犬)」「にゃーにゃ(猫)」「にゅーにゅ(牛乳)」「じっす(ジュース)」「めんね(ごめんね)」など、日常的に使う(そして私にも理解できる)言葉が増えてきた。私のことは「まんまー」と呼んでいる(らしい)。違うよ、おかあさんだよ、と言っているのだが、何故かまんまーのまんまである。
表情もとみに豊かになった。牛乳が飲みたい時は、唇を最大限突き出して「にゅーーーにゅーーー」と連呼する。ふざけて拗ねる場合にも、口がにゅーっとなり、顔をぷいっと逸らす。変な顔を作って、それが受けると喜んで、もっと変な顔にチャレンジする。
おしっこ・うんちの時には、股間を押さえて切迫した表情を作る。「トイレ行く?」と聞くと、頷いて走り出す。小さな便座の上に乗せると、排泄する時もあるし、ただ乗っかってニコニコしていることもある。大人の真似をするだけでも楽しいようだ。保育園でも、すぐトイレに行きたがるらしい。なんでそんなにお便所が好きなのかは不明。
理解力は語彙を超えており、話しかけることはたいてい理解できるようだ。帽子と言えば頭を触り、靴下と言えば足を触り、時計といえば手首を見せる。(私の腕時計が欲しいらしい。)豚のぬいぐるみに名前を付けると、すぐに覚えて「どこかな?」と聞けば探して持ってくる。「すべりだいする?」と尋ねると、勇んで公園に向かう。(そして、いつまでもいつまでも私が音を上げるまで登っては滑り、登っては滑る。)もう、かん子さんの前でヘタなことは話せない。



元気な明るい美しいこども。ほんとに、なんでこんな私のところに、こんないい子が産まれたものかと、今でも時折不思議に思う。ずっといい子でいなくたっていいが、ずっと長く一緒にいたいものである。幸せと希望をしみじみと噛みしめる秋の夜。