かん子さんの新しい友達

nekonomimi2007-09-28

先日、友人との待ち合わせに早く着いてしまった。時間つぶしにベビーカーを押しながら駅ビルを徘徊していたところ、雑貨がぞろぞろ並ぶフロアで、かん子さんが急に「こえ!」と指差し呼称をした。その先を見ると、大人でも抱えきれないほどのサイズの豚のぬいぐるみがあった。ビーズクッションとぬいぐるみの相いの子のような物で、すべすべの張り地はピンクと黒の二色展開。黒は怖いらしくて、「ないない」と拒否するのだが、ピンクの方にはもう視線釘付けである。しかし、大き過ぎるし、値段も高い。脇を見ると、同じ豚の小サイズ(枕大)があった。値段もさほどではないし、軽くて、かん子さんがどうにか抱えられる大きさではある。試しに渡してみると、笑顔で優しく抱きしめて、背中をぽんぽんしている。
けれども、私は厳しい母親なので、やたらに買い与えるのはよろしくない(第一、これを今日一日持ち歩くのか?)と思い返し、豚を売り場に戻した。「はい、豚さんにバイバイしてー」と言うと、拗ねていたかん子さんもそれ以上はゴネなかった。
引き続きうろうろしていると、かん子さんが再び声を上げた。視線の先にはまたしてもピンクの豚。しかし、今度の豚は大人の掌に乗る程度の大きさで、素材は合皮。かん子さんは、ベビーカーの中で身をよじり、手を伸ばして「ちょーちょー」と触りたがっている。
二回続けてピンクの豚。こんなに豚が好きだとは知らなかった。それならばと、どちらかを買ってやることにした。小さい豚の値段は、枕サイズの豚の半分である。(英語の文例みたいだな。)財布としても荷物としても、こっちの方がありがたいが、本人の意思を尊重することにした。
(枕の売り場に行って)「こっちがいい?」
(小さい方の売り場に行って)「こっちがいい?」
(再度枕の/以下略)
結果、かん子さんは小さい方を選択した。気付けば時間ギリギリだった。



ピンクの豚は、しばらくの間名無しだった。「ピンクの豚さん」と呼んでいた。これじゃいかんな、と思い、「名前を考えようよ」とかん子さんに言った。(かん子さん、うんうんと頷く。)
「お母さんはね、『ブラス警部』がいいと思うの。それで、『ブーちゃん』って呼ぶの。どう?」
(かん子さん、イヤイヤをする。)
「じゃあねえ、『ウォリック』は?(イヤイヤ)『ニック』は?(イヤイヤ)『グレッグ』?『ロビンス先生』?『サラ』?『キャサリン』?(全部イヤイヤ)」
「……(これはとっておきの名前で、いつか特別なものにつけようと思っていたんだけど)それなら、『グリッソム』で『グリちゃん』は?」
(かん子さん、笑顔でうんうんと頷く。)
そんな訳で、この豚の名は「グリちゃん」である。本名はギルバート・グリッソム。本当はラスヴェガス市警CSI(科学捜査班)の主任なのだが、かん子さんはそのことを知らない。


早速名前を覚えたかん子さんは、グリちゃんをとてもかわいがっている。
豚が出て来る絵本を読んでもらう時は、グリちゃんを連れてきて一緒にすわる。(そして、豚が出てくると、抱っこして「ぶっぶ」と言う。)出掛ける時は持って出て、ベビーカーの中で落とさずに抱えている。(時々耳をしゃぶりながら寝ている。)末永く仲良くしてください。
ところで、実はグリちゃんはただのぬいぐるみではない。というか、実際ぬいぐるみとして売られていたわけではない。

巻尺なのである。


「グリちゃんです」と言うと、十中八九「ぐらちゃんもいるの?」と聞かれるだろうなあ、ということは後から気付いた。「グリとうら」なんです、と説明せねばなるまい。