読書2007〜もう一度読み返したい本10冊

去年の読書記録は67作(指輪物語9巻を1作とする)。実際にはもう少し読んでいるので、新しく読んだものだけで考えると、80に少し欠ける程度だろうか。こどもが寝てばかりだった一昨年よりは忙しくなっているということか。
今回は、2007年に初めて読んだ中で、今思い出して再読したいと思える作品を10点挙げてみる。
読書を趣味とする人は多いが、その内容は多岐に渡る。好みのジャンルは様々だし、読むスタイルも違う。私の読み方には「好きな作品は何度も読む」という傾向がある。子供の頃から、気に入った小説は何度も読む。次に何が起こるか、誰が犯人か、全部覚えていても、「このページをめくればあのシーンが始まる」とわくわくしたり、「ここであの人があの台詞を言うんだ」と楽しみに待ち構えたりしている。
そんな風に、この先何度も読み返したいと思える作品を選んだ。例年通り、順位は付けない。

阿修羅ガール

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阿修羅ガール (新潮文庫)
舞城 王太郎
新潮社 2005-04

by G-Tools , 2008/01/24

内容(「BOOK」データベースより)
アイコは金田陽治への想いを抱えて少女的に悩んでいた。その間に街はカオスの大車輪!グルグル魔人は暴走してるし、同級生は誘拐されてるし、子供たちはアルマゲドンを始めてるし。世界は、そして私の恋はどうなっちゃうんだろう?東京と魔界を彷徨いながら、アイコが見つけたものとは―。三島由紀夫賞受賞作。受賞記念として発表された短篇「川を泳いで渡る蛇」を併録。

よく思い出す作品なのだが、実を言うと恐れてやまないキャロルの「天使の牙から」よりこっちの方が怖い時がある。真実に気付く恐怖、とか修辞的なものではなく、走って逃げたいけど動けず、声も出ないまま失禁しそう、とかそういう何か物理的とも言える恐怖である。それを味わいたくて再読、じゃなくて、もう一度よく読んだら怖くなくなるかも……という淡い期待を込めた選択。

蟹と彼と私

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蟹と彼と私
荻野 アンナ
集英社 2007-08

by G-Tools , 2008/01/24

あの日、空の底が抜けた。食道ガンに冒された最愛のひと。あなたの命が先なのか、私の気力が続くのか。“出口”をもとめ爆走する、妄想と情熱の闘病記。芥川賞作家による、最新長編小説。

ガンに侵された恋人を看護する著者による、私小説のような幻想小説。男女の関係や、病が蝕むものについて考えさせられた。全編に絶え間なく織り込まれるジョークや奇妙なシーンの描写は、おかしいけれども笑えない。軽い気分で読める作品ではないが、その分印象はずっしりと残っている。

最後のウィネベーゴ

内容(「BOOK」データベースより)
愛するものを失う痛みと、滅びゆくものへの哀惜、そして赦し。犬が絶滅してしまった近未来のアメリカで孤独な男が出逢う、ささやかな奇蹟…。読後に深い余韻を残す表題作から抱腹絶倒コメディまで、アメリカSF界の女王ウィリスのベスト・オブ・ザ・ベスト4本を厳選する傑作集。ヒューゴー賞ネビュラ賞・SFクロニクル誌読者賞・ローカス賞他、収録作4篇あわせて全12冠。

読み終えて時間が経ってからでも、何度となく思い出す一冊。表題作が、その哀しさゆえに最も印象深いが、ユーモラスな「女王様でも」、ロマンチックな「スパイス・ポグロム」のことも何度か思い出した。かん子さんにもいつか読んでほしい一冊である。

10ドルだって大金だ

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10ドルだって大金だ (KAWADE MYSTERY)
ジャック・リッチー 藤村 裕美 白須 清美
河出書房新社 2006-10-13

by G-Tools , 2008/01/24

内容(「BOOK」データベースより)
結婚三か月、そろそろ妻を殺す頃合だ―財産目当てに妻殺しを計画する男を待っていた皮肉な展開をオフビートなユーモアをまじえて描く「妻を殺さば」、銀行金庫の中の“余分な”10ドルをめぐって二転三転する「10ドルだって大金だ」、迷探偵ターンバックル部長刑事シリーズなど、巧みなツイストと軽妙なタッチが冴える短篇ミステリの名手リッチーの傑作14篇。

愛するジャックの第2短編集。気軽に読めて、毎回楽しい。

天使が震える夜明け

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天使が震える夜明け (ヴィレッジブックス)
P.J. トレイシー P.J. Tracy 戸田 早紀
ヴィレッジブックス 2006-09

by G-Tools , 2008/01/24

内容(「BOOK」データベースより)
ウィスコンシンの田舎町、肌寒い秋の夜明けに、教会で老夫妻の惨殺死体が見つかった。夫妻の周辺を調べると、彼らが身元を隠して各地を転々としていたことがわかる。一方、隣の州のミネアポリスの凍えるような早朝にも、あるPCゲームを正確に模した殺人事件が次々と発覚していた。そのゲームを作成したのは“モンキーレンチ”という個性的な5人のメンバーで運営されている会社で、彼らもまた過去を抹消して生きていた。一見まるで関係のない2カ所の事件が交差したとき、共通する驚愕の事実が明らかになってくる!4つの新人賞を受賞した話題の母娘作家、堂々のデビュー・サスペンス。

派手な仕掛け、チラリズムを巧みに用いた構成、人物造形の妙によって生まれたエンターテイメント。話は全部覚えているけれど、登場人物の何人かにまた会いたくて再読予定。続編は何故か別の出版社から刊行されているが、そちらも間もなく読む予定。

天使の牙から

内容(「BOOK」データベースより)
癌で余命いくばくもない往年のTVスター、フィンキー・リンキー。その彼の前に“死”そのものが現われ、死者を蘇らせる奇怪な力を授けてゆく…いっぽう世界的な女優だったアーレンは、ひょんなことから巡り会った一人の戦場カメラマンに真摯な恋心を抱くようになるのだが…ふたつの物語が交錯するとき、明らかにされる衝撃の真実とは。死という永遠のテーマに挑む鬼才、愛と死の錬金術師キャロルがおくる感動の傑作長編。

ふとした拍子に、この小説のことを思い出すことがある。すると、身近な現実のそこここに「天使の牙」が見え隠れするように思えて、慄然とする。信じて頼っているものが、急に敵意をむき出しにして襲い掛かるような恐怖を覚える。そんな風に恐ろしく感じつつも、この小説の持つ魅力を再度味わいたいとも思っている。ほんと、自分でも分からん。なんでなんだろうなあ。

本泥棒

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本泥棒
マークース・ズーサック 入江 真佐子
早川書房 2007-07

by G-Tools , 2008/01/24

出版社からのコメント
わたしは死神。自己紹介はさして必要ではない。好むと好まざるとにかかわらず、いつの日か、あなたの魂はわたしの腕にゆだねられることになるのだから。これからあなたに聞かせる話は、ナチス政権下のドイツの小さな町に暮らす少女リーゼルの物語だ。彼女は一風変わった里親と暮らし、隣の少年と友情をはぐくみ、匿ったユダヤ人青年と心を通わせることになる。リーゼルが抵抗できないもの、それは書物の魅力だった。墓地で、焚書の山から、町長の書斎から、リーゼルは書物を盗み、書物をよりどころとして自身の世界を変えていくのだった……。『アンネの日記』+『スローターハウス5』と評され、アメリカ、イギリス、オーストラリアなどで異例のベストセラーを記録中の、新たな物語文学の傑作。

いつか、かん子さんに読んでほしい一冊。思い出すと、切なくて哀しい。と同時に、不思議な希望が残されていることにも気付く。人間は捨てたものではない、と感じる。

マジック・フォー・ビギナーズ

出版社 / 著者からの内容紹介
アメリ東海岸に住むジェレミー・マーズは、巨大蜘蛛もの専門の人気ホラー作家を父に持つ15歳の少年。毎回キャストが変わり放送局も変わる、予測不可能で神出鬼没のテレビ番組「図書館」の大ファンだ。大おばからラスベガスのウェディングチャペルと電話ボックスを相続した母親とジェレミーは、そこに向けての大陸横断旅行を計画している。自分の電話ボックスに誰も出るはずのない電話を何度もかけていたジェレミーは、ある晩、耳慣れた声を聞く。「図書館」の主要キャラのフォックスだった。番組内で絶体絶命の窮地に立たされている彼女は、ある3冊の本を盗んで届けてほしいというのだ。フォックスは画面中の人物のはず。いったい、どうやって? ジェレミーはフォックスを救うため、自分の電話ボックスを探す旅に出る……。爽やかな詩情を残す異色の青春小説である表題作(ネビュラ賞他受賞)。
国一つが、まるごとしまい込まれているハンドバッグを持っている祖母と、そのバッグのなかに消えてしまった幼なじみを探す少女を描いたファンタジイ「妖精のハンドバッグ」(ヒューゴー賞他受賞)。なにかに取り憑かれた家を買ってしまった一家の騒動を描く、家族小説の傑作「石の動物」。
ファンタジイ、ゴースト・ストーリー、青春小説、おとぎ話、主流文学など、さまざまなジャンルの小説9篇を、独特の瑞々しい感性で綴り、かつて誰も訪れたことのない場所へと誘う、異色短篇のショウケース。

これこそ、しばしば思い出す作品だった。どの話のどの部分、というのではなく、表紙の赤い電話ボックス(塩田雅紀)や、本文に挿入される奇妙なイラスト(シェリー・ジャクスン)、読んでいるときに思い浮かべた登場人物の姿などが、印象的なフレーズの幾つかと共にぼんやりと浮かぶのである。こういうものが注ぎ込まれている私という人間は、一体どんな生き物なんだろう、などと考える。

野蛮人との生活

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野蛮人との生活―スラップスティク式育児法
ジャーリイ・ジャクスン 深町 眞理子
早川書房 1974-05

by G-Tools , 2008/01/24

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Life among the Savages
Shirley Jackson
Penguin (Non-Classics) 1997-10-01

by G-Tools , 2008/01/24

絶版の上、古書も入手困難。再読したいけど、図書館のお世話になるしかなさそう。そういう意味でも、内容の面白さからも印象深い一冊。

雪沼とその周辺

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雪沼とその周辺 (新潮文庫 ほ 16-2)
堀江 敏幸
新潮社 2007-07

by G-Tools , 2008/01/24

内容(「BOOK」データベースより)
山あいの静かな町、雪沼で、ボウリング場、フランス料理屋、レコード店、製函工場、書道教室などを営む人びと。日々の仕事と真摯に向きあい、暮らしを紡いでゆくさま、その人生の語られずにきた甘苦を、細密な筆づかいで綴る最新短篇集。川端康成文学賞受賞作「スタンス・ドット」ほか、雪沼連作全七篇を収録。

派手な所はまるでないが、一篇一篇が実に印象深い短編集。タイトルの「雪沼」は地名で、そこ及び周辺に住む市井の人々の様子を淡々と描いている。長い物語の、クライマックス直前までを切り取ったような作風が、何とも言いがたい味わいを残す。もう一度と言わず、人生の中で何度も読み返したい。収録作品:スタンス・ドット/イラクサの庭/河岸段丘送り火/レンガを積む/ピラニア/緩斜面


惜しくも選外としたものは一つだけだったので、おまけの11冊目も付ける。私っていーかげんだわ。

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ヘルファイア・クラブ上 (創元推理文庫)
ピーター・ストラウブ 近藤 麻里子
東京創元社 2006-08-24

by G-Tools , 2008/01/24

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ヘルファイア・クラブ下 (創元推理文庫)
ピーター・ストラウブ 近藤 麻里子
東京創元社 2006-08-24

by G-Tools , 2008/01/24



今年も良い本に出会えますように。